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「不動産の利回り」ちゃんと理解していますか? ~DCF法~

– 収益評価の基本のキ(第4回)-
「不動産の利回り」ちゃんと理解していますか? ~DCF法~

藤井和之
株式会社タス

 前回(第3回)は、日本で一般的に利用されている直接還元法について解説いたしました。
 今回は、日本において主に証券化不動産の評価で利用されることが多いDCF法(Discounted Cash Flow)について解説します。

 DCF法の基本的な考え方は「貨幣の時間的価値の違い」に基づいています。これは、現在所有している貨幣の価値と将来所有している貨幣の価値は、例え額面が同じであったとしても異なるという考え方です。
 例えば、現時点で100万円を所有しているとします。これを1年間運用する場合、通常はなんらかのリスクに見合った利回りを得ることができます。利回りが年利10%とすると、現在の100万円は1年間の運用後には110万円となります。つまり、リスクに見合う利回りが10%の場合は、現在の100万円と1年後の110万円は同じ価値であることになります。

 ここで、現在所有している価値を「現行価値」(CV:Current Value)と呼びます。現行価値に対して、ある利回りに基づいて算出した将来時点の価値を「将来価値」(FV:Future Value)、逆に将来の価値からある利回りに基づいて算出した現時点の価値が「現在価値」(PV:Present Value)です。そして、将来の価値を現在価値に割引計算(Discounted)するために用いる利回りを「割引率」(Discount Rate)と呼びます。(図1)
 つまり、現在価値は以下の計算式で表現することができます。

図1 貨幣の時間的価値

 「貨幣の時間的価値」の考え方を利用した不動産の現在価値の算出は、以下の手順で行います。(図2)
:対象とする不動産から得られる将来の各期のキャッシュフローを、物件からの収益が得られなくなる(物件が取り壊される)まで予測します。なお、ここで予測するキャッシュフローは、第1回で解説したNCF(ネットキャッシュフロー)を使用します。
:予測された将来の各期のNCFを、各期のリスクに見合った適切な利回り(割引率)で割引計算を行い、各キャッシュフローの現在価値を算出します。
:Bで得られた各期のキャッシュフローの現在価値の総和をとります。これが対象不動産の現在価値となります。

 このように物件の存在する限りのキャッシュフローを使用する方法が本来のDCF法の考え方です。従ってDCF法を用いた不動産の現在価値は、以下の式で計算されることになります。

図2 DCF法の考え方

 しかしながら、対象不動産の将来のキャッシュフローを対象不動産が取り壊されるまで長期に予測するのは大変困難です。なぜなら、遠い将来のキャッシュフローは根拠のない単なる憶測となってしまうからです。

 また、数年後の物件の売却(EXIT)を念頭においた不動産投資も多く行われています。
 そこで一般には予測が可能な時点まで(ほとんどのケースが10年以内)のキャッシュフローのみを予測し、それ以降の不動産のキャッシュフローは安定したものであると仮定して、最終年度の翌年の不動産価格を直接還元法で算出(これを復帰価格と呼びます)し、それ以降のキャッシュフローの現在価値の総和の代用とする方法がとられています。そして、復帰価格を算出するときに使用する算出時点の「収益還元利回り」(CAPレート)を、直接還元法で利用するものと区別して最終還元利回り(ターミナルCAPレート)と呼んでいます。(図3)

 また、各期のキャッシュフローのリスクに見合った割引率を設定し割引計算することも煩雑であることから、不動産に投資している期間を通した「割引率」を使用して割引計算を行う方法で代用しています。
 これが、我々が一般にDCF法と呼んでいる方法です。この方法による不動産の現在価値は以下の計算式で表現できます。

 復帰価格を求める際に、売却時の費用想定分(例:復帰価格の2%を費用とする等)を差し引く方法もよく利用されています。
 なお、n期までのキャッシュフローについてはNCFを用いますが、復帰価格算出に用いるn+1期のキャッシュフローについては、欧米ではNOI(ネットオペレーティングインカム)を使用しています。日本においては、直接還元法と同様にNCFを使用することが不動産鑑定基準で定められています。

図3 一般的なDCF法

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