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宅配サービスって不動産市場に影響する?-行列ができるラーメン店と同じです


経済学からみた不動産市場(第41回)

浅田義久
日本大学経済学部教授

 

 

 学部の頃に,「何故,行列ができるラーメン店は値上げしないか分かるか」と何度も指導教員に聞かれました。宣伝効果ではないことは確かです。それは短期的影響しか与えず,それならバイトを雇って行列を作れば良いだけですから。まあ,行動経済学では分析されているようですが,古典的な経済学でも分析できます。


 さて,答えは最後に持ってくるとして,これが最近の外食などの宅配サービスと同じ構造と言うことが重要です。

 今回のコロナ禍で,様々な飲食店が宅配サービスを行っています。この宅配サービスとの代替財はなんでしょうか。従来は店という土地が投入財だったのが,消費者が店に来るコスト(コロナに罹るリスクがコストになります)が高くなり土地という投入財の需要が低下し,地代が低下します。そして,土地から宅配サービスという労働という投入財にシフトします。ようするに土地から労働への技術的代替が起きてしまっています。さて賃金,地代,限界生産物がどのような関係になっているかは経済学部出身の人はわかりますよね。これは各自の宿題。

 ここで,やや複雑なのは,土地は固定的投入物,労働は可変的投入物ってことです。ようは,土地は固定的投入物なので短期(経済学で短期と長期,超長期は抽象的な概念で,どのくらいかは確定できませんが,土地は半年ぐらいと考えられると思います)では投入量は変化しません。

 ただ,今回の例でちょっと難しいのは,その費用(固定費用)である地代は変化してるってことです。一般的なミクロ経済学の教科書では価格は所与なので変わらないことになっていますが,今回のコロナ禍では地代が全般的に低下しているので,それも加味する必要があります。対して,労働(ここでは,バイトですが)は可変的投入物で,バイト代は可変費用となり,短期でも投入量は変化します。ミクロ経済学の教科書では資本(機械)と労働の代替を考えますが,この場合は資本でも土地になります。そして,価格の変動が教科書とはちょっと違うことが難しいのかな。要するに,価格を所与としてお店は最適な資源配分を行っていると言うことです。

 コロナが終息すると不動産市場はどうなるかは、上記の市場をモデル化し技術的代替率やコロナによる通勤コストの上昇幅,地代,賃金関数を推計する必要があります。前回のコラムの続きになりますが,タスの研究員や私の研究室の若手が分析してくれると思います。


 さて,最初の問題の,行列ができるラーメン店はなぜ値上げしないかを考えましょう。まず,競争市場だから価格は市場で決まるって回答する人はもう少し経済学を勉強しましょう。ここでは,差別化されたラーメン屋ですからある程度(どの程度かちょっと経済学を学んだ人ならわかるよね)価格を決めることができます。

 さて,ラーメン生産には店主の技術・労働と設備と土地を投入するとします。ここで,時間あたりの生産量はラーメンを作っている労働者数と設備に依存します。それに応じて必要な店の広さは決まってきます。この労働者数と設備によってラーメン需要が多い時間帯に作ることができるラーメンの量は決まってきます。要するに,生産関数は固定的投入物(店主しかラーメンを作れないとすると店主の労働は固定的投入物になります)で決まってくると言うことです。そして,ラーメンの価格を上げると当たり前ですが,価格弾力性が大きい,ラーメン需要が多い時間帯の需要者数が減少し,おそらく収益が減少します。

 なぜ行列ができているかは地方のお店に行けばわかりますが,地方のお店ではお店の中で商品が出てくるのを待っているだけで,お店の中で行列ができているだけです。地方では地価が安いので待っている場所の地代はたいしたことはありませんが,地代が高い都心ではお店は地代を払うことができないので公道で待たせているだけですね。最近,キッチンカーが流行しているのも同じ理由です。

 ここでも,価格を所与としてラーメン店は最適な資源配分を行っているだけです。各々の産業やお店でどのような生産関数を持って,どのような需要関数に直面しているかをちゃんと分析してみましょう。それで,不動産需要もわかり,不動産価格への影響もわかると思います。

 アメリカの経済学の教科書にビルゲイツが買いに行くハンバーガー店と,学生が買いに行くハンバーガー店ではどちらが行列が長いかって問題が出てましたが,わかりますよね。これは機会費用を考えてくださいね。





浅田 義久
浅田 義久
日本大学 経済学部 教授 [経歴]上智大学大学院経済学研究科博士前期課程修了 三菱総合研究所、明海大学等を経て、現職 [専門]経済政策、財政・公共経済
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