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空き家って・・・。「喫煙したいのに我慢するから補助金ください」は許される?


経済学からみた不動産市場(第42回)

浅田義久
日本大学経済学部教授

 

 

 前回の生産関数のお話は経済学部出身以外の方には難しかったかもしれませんね。経済学部出身の方もあのぐらいは理解してもらわないと経済学部の教員としては厳しいですね。今回もやや難しいかもしれませんが,近年問題になっている空き家問題です。ただし,タスの空き家情報は後述のように該当しません。

 空き家の定義がやや明確でないのですが,一般的には総務省統計局の「住宅・土地統計調査」の定義を用いています。そこでは,二次的住宅(別荘,たまに使う住宅),賃貸用住宅の空き家,売却用住宅の空き家,その他の住宅の空き家(長期にわたって不在の住宅や建て替えを考えている住宅)です。上記の中で,二次的住宅は空き家に入れる必要があるかよく分かりません。外部不経済をもたらす別荘もありそうですが,これを分析したものはないのでは。


 賃貸住宅の場合は二通りあります。上記のタスの空き家情報は市場に出ているので,所有者に利用意思はあると思います。問題は市場に出ていなくて放置されている賃貸住宅です。

 ただし,これも二つあって,後述する開発(再建築)の最適時期を待っている賃貸住宅と収入を見込めないために放置している賃貸住宅です。この二つも明確に識別できるわけではなく,相続を待っている場合は,開発の最適時期を待っている場合と,開発しても利潤を得る可能性がないため放置している場合があるはずです。


 売却用住宅の空き家は市場に出ているので,おそらく利用意思があると思いますが,その他の住宅の空き家も上記のように開発の最適時期を待っている住宅と開発しても利潤を得る可能性がないため放置している場合があるはずです。

 この開発の最適時期の検討は非常に難しく,例えばエアコンを買い替えるかどうか。買い替える費用はかかりますが,燃費は良くなるはずです。ただ,現在持っているエアコンは燃費は悪いが,まだ使えるとき,あなたはどうしますか。当然,今後のエアコンの技術進歩も考慮する必要があります。建替も同じような問題が生じてかなり難しい判断が必要になります。これはタスが何らかの情報を提供する必要があるのでは。


 さて,放置された空き家をどうするかが問題になっているわけです。

 周辺の地代を下げるような外部不経済を出す“空き家”の最適化を経済学的に解決するには,取り壊し費用を補助するか,放置することに罰金を課すという二つの方法があります。コースの定理というのですが,どちらも同じ“空き家”水準になるはずです。権利がどちらにあるかの問題になりますが,資源配分には差異がありませんが,所得分配に差が出てしまいます。追ってどこかで詳しくお話ししますが,権利って所得分配を決めるんです。そして,経済学は所得分配にあまり関与しません。200万円の撤去費用が払えないという意見もありますが,もしその程度の価値しかない土地であれば周辺への外部不経済もありませんから何もしなくて良いと思います。


 上記のコースの定理を喫煙で考えましょう。ここでは,副流煙の悪影響があると仮定していきましょう。喫煙による外部不経済が100だとします。喫煙者の満足が90の時,社会全体では-10の価値しかないので喫煙することは最適ではありません。ここで,喫煙の権利を認めると,隣人は喫煙者に100の補助金をだすから喫煙を辞めて欲しいと交渉し,喫煙者は辞めた方が10得するので辞めます。次に,綺麗な空気を吸う権利を認め,100の罰金を課すことにします。罰金は100で満足が90なので喫煙しないはずです。

 ようするに,社会的に望ましくない場合はどちらに権利を与えても喫煙しなくなります。ただし,前者では喫煙者が100の補助金をもらいますが,後者ではもらえません。これが,所得分配が異なると言うことです。さて,喫煙による外部不経済が90で,喫煙者の満足が100の時どのようになるかを考えてみてください。


 さて,一般的に外部不経済を生じる主体に課金をするのは倫理的な観点といわれそうですが,もし,補助金を出すことにするとどうなります?私なら,「私は喫煙したいのに我慢するから補助金ください」っていうかも。この制度は成立しないんですね。さて,補助金を出して空き家を撤去するって成り立ちますかね。

 

浅田 義久
浅田 義久
日本大学 経済学部 教授 [経歴]上智大学大学院経済学研究科博士前期課程修了 三菱総合研究所、明海大学等を経て、現職 [専門]経済政策、財政・公共経済
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