ミクロデータ×マクロデータによる
新たなソリューション

今般、株式会社三友システムアプレイザルと株式会社タスは、協業にて「社宅跡地における最適利用検討のための市場調査レポート」を作成・提供いたしました。本レポートは、三友システムアプレイザルによる個別の案件にフォーカスした調査データ(ミクロ)と、タスのビックデータを分析した不動産マーケットデータ(マクロ)を掛け合わせた新たなソリューションとなっております。

レポートが完成するまでの経緯やデータ内容なども含め、三友システムアプレイザルの担当者にインタビューを行いました。

客観的なデータを用いた分析とレポートで、説得力のある提案を実現

業種 エリア
不動産 西日本
株式会社三友システムアプレイザル 大阪支店

ーはじめに、貴社の紹介をお願いいたします。

株式会社三友システムアプレイザルは、昭和55年設立の不動産鑑定調査会社です。東京に本社を置き、大阪支店・名古屋支店・東北支所の国内4拠点のほか、米国・韓国・タイと海外の提携先もあり、海外不動産の鑑定などグローバルなニーズへの対応も行っております。

他の鑑定会社には無い特徴としては、各都道府県に業務提携した不動産鑑定士や地場不動産に精通する調査員網があり、地元ならではの情報収集が可能となっている点が挙げられます。また、いわゆる不動産鑑定調査だけでなく、動産評価および業務支援サービスのほかグループ会社における事業性評価など、不動産鑑定会社の枠を超えて幅を広く事業を行っております。

そういった点を評価いただいた結果、鑑定評価をはじめとする不動産の各種調査分野において、おかげさまで12年連続年間取扱件数No.1と国内トップクラスのご用命をいただいております。

ー「社宅跡地における最適利用検討のための市場調査レポート」についてお聞きします。どのような目的での依頼だったのでしょうか。

近年、企業保有の社宅が老朽化すると共にCRE戦略※1の見直しを迫られているケースが増えています。今般顧客も同様の状況で「CRE戦略の一環として、企業保有の老朽化した社宅を廃止後どういった形で市場に出すのが良いのか、現地情報やマーケットデータ等を併せて教えて欲しい」という内容で依頼がありました。

※1 企業不動産について「企業価値向上」の観点から、経営戦略的視点に立って見直しを行い、不動産投資の効率性を最大限向上させていくという考え方

ー本プロジェクトを進めるうえで、意識した点はどんなところですか。また、納品までのスケジュールについて教えてください。

顧客が何を本当に望んでいるのか、言い換えれば顧客の真のニーズがどこにあるのかを理解するように努めました。

プロジェクトスタートから約1か月程度での納品でしたが、レポートの着地点や全体のイメージに齟齬があってはいけませんので、納期の約1週間前にレポートドラフトを提示しました。また、今回は依頼先が遠方だったため、WEBや電話ミーティングによる打合せで繰り返し意見交換を行い、双方でイメージを共有し固めていきました。その結果「売却等による短期的な目線ではなく、中長期的かつ安定的な運用をイメージ」されているという事が把握でき、レポート全体のテーマがしっかり定まったように思います。

ー続いて、レポートの内容についてお伺いします。今回の依頼ケースはどのようなエリアでしたか。

依頼のあった物件は高台に位置しエリア内でも有数の高級住宅地だったので、やはり経済的に余裕のある層向けの住宅が最適利用だろうという感覚は当初からありました。しかし、今回の依頼は中長期的な運用をイメージされていたため、高級志向のスーパーマーケットや老人ホームなど様々な可能性を一つひとつ検討したうえで、最終的にファミリー・DINKS※2向けの賃貸物件を最適利用といたしました。

※2 共働きで子供を意識的に作らない、持たない夫婦、またその生活観のことを指す。英語の "Double Income No Kids" または "Dual Income No Kids"(倍の/ふたつの収入、子供なし)の略語

ー具体的にはどのような手法や考え方で、最適利用を決定したのでしょうか。

まず、用途地域や土地の形状等からスーパーマーケット等の店舗は難しいと判断し、住居系に絞って考えていきました。また、エリアの条件的には老人ホームも悪くは無かったのですが、運営に一定のノウハウが必要な事や収支が外部要因に左右される可能性等も考慮し、安定的な運用を希望している今回の依頼とは合致しないと判断しました。その後、土地の規模から考えて戸建てよりもマンション系、中長期的な運用という観点から分譲ではなく賃貸系と絞っていきました。

最終的に今回の最適利用を決定づけたのは、弊社スタッフによる現地調査やヒアリングに加えて、業務提携した現地の不動産鑑定士や調査員の独自調査による「ファミリー・DINKS向け賃貸物件に高い需要がある」という情報、そして、タス社提供の分析データによる「同層向け賃貸物件の空室率が落ちにくい傾向にある」という情報を加味しての結果です。

ーデータの割合等を含めて、レポート全体としてはどのような構成でしょうか。

レポートは大きく3段構成となっていて「不動産情報・人口動態・開発情報」などの上段、「用途ごとのマーケット情報」などの中段、「立地競争力を踏まえた最適利用の考察」などの下段に分かれています。データの割合としては、上段は弊社・タス社両方のデータを使用、中段はタス社データをメインに、下段はこれまでのデータを基に弊社不動産鑑定士が考察しております。

今回は、弊社の個別案件にフォーカスしたミクロな視点のデータと、タス社のビックデータを分析したマクロな視点のデータを組み合わせたモデルケースとなり、顧客が当初から希望していたように現地情報とマーケットデータ等を組み合わせた新たなソリューションとして提供できたように思います。

ー先ほどお話いただいた通り、今回タスが担っていたのはマクロな視点でのマーケットデータの提供でした。実際にタスが提供したデータをどのように活用されましたか。

我々不動産鑑定士がこれまでの経験則で得た知識の裏付けや補足材料として、大変重宝いたしました。

例えば、今回の依頼エリアは単身向けよりファミリー向けの物件の方が向いているだろうという感覚は当初から持っていましたが、実際に提供されたデータを見てみると、ファミリー系だけでなくDINKS系の物件についても空室率が落ちにくいという傾向がわかってきました。また、賃料データのように、元来入手が難しく我々鑑定士でも持っていないようなデータでも、駅別や町丁目単位まで細分化されて網羅されており非常に驚きました。

こうした客観的なデータを用いることで分析・考察に厚みができ、結果としてレポートの説得力が増したと感じています。

ー今回のレポートは、不動産鑑定評価書とどのような違いがあるのでしょうか。

一般に不動産鑑定評価書は、最終的な価格を明示する事が最大の目的となっています。対して今回のレポートは評価額にこだわらず、今後の戦略指針となるようなある意味コンサル的な目線での内容となっており、新たなソリューションのモデルケースとして非常に手ごたえを感じています。

また、鑑定評価書において通常必須である評価額は、今回顧客が重視するポイントではなかったため算出していませんが、今後同様の依頼があった際には顧客希望に合わせて柔軟に対応していければと考えています。

ーレポートの提供後、どのような反響がありましたか。

先方は当該物件を商業系用途へ転用というのも視野にあったようですが、レポートによって今後の方向性が明確になったと喜ばれました。

今回のようにデータに基づく客観性に加えて、地元情報を反映した泥臭いレポートには、非常にご満足いただけていたように思います。

ー最後に、貴社が今後目指すビジョンについて教えてください。

ネットで公開されている行政情報やビッグデータに基づく情報など今では手軽に入手できるものが多く、不動産調査も相当効率良く出来るようになりました。しかし、これらで把握しきれない肝となる情報は、依然として人の手に依るところが大きく、一層価値あるものになっています。また、人手不足による人件費の高騰や新型コロナをきっかけとした在宅勤務の定着により、外部に任せられるものは積極的に外出しするアウトソーシングも一層加速していることも感じます。

益々多様化する顧客ニーズに応えるには人手による調査だけでは限界もあり、ときにはネット情報とアナログ情報を効率良く組み合わせることが必要となります。弊社グループは、グループで蓄積した多くのデータと510名の不動産鑑定士や地域精通者との協働により、日々いただく様々なニーズにお応えしています。これからも、顧客が真に求めることは何かを正確に把握し、高い専門性をシンプルな形で提供する会社でありたいと考えています。

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