不動産リスクに力点を置いた価値把握

- 相続増税時代の不動産リスク- 価値把握とビジネスの可能性とは?

 全国ネットの不動産鑑定機構を持ち、不動産鑑定評価実績において全国トップシェアを誇る株式会社三友システムアプレイザル。金融機関や一般事業会社の顧客に加え、会計事務所との連携も強化している。一般に鑑定事務所が税理士向けに行っている、広大地評価や建物所有目的の土地賃貸借、法人設立のための建物評価といった視点だけでなく、「不動産リスクに力点を置いた価値把握」を重要視している。相続増税時代、不動産の鑑定・調査により正確性と公正性が求められる時代、リスク分析とそのビジネスの可能性について、同社取締役、常務執行役員の田井政晴氏に聞いた。
本記事は、税界タイムス第48号(発行:平成27年12月 株式会社ゼイカイ)に掲載された記事を、許可を得て再掲載したものです。

物件購入先が税理士の関与先ならば、リスク分析は必要不可欠

業種 エリア
不動産 全国

ーまず、三友システムアプレイザルの沿革からお聞きします。

当社は昭和55年に設立しましたが、当時は、金融機関の担保評価や生損保会社が新たに不動産を購入した際の時価評価などを行っていました。

しばらくしてバブルが崩壊し、公示地価と実勢価額がものすごく乖離してきて、相続破産という現象も起き始めました。会社が次々と倒産していく中で、それらの会社が保有する資産の内容を査定する必要が出てきて、預金保険機構を経由して仕事を依頼されるようになりました。

また、生命保険会社にはソルベンシーマージン比率の見直しなどが求められ、国内の生命保険会社から保有不動産の時価評価を依頼されました。恐らく、全体の7割くらいは当社が評価を行ったと思います。

ーなぜ、それだけ多くの依頼が寄せられたのでしょうか。

その頃、全国各地の鑑定評価を限られた期間で実施できる会社は、現在の一般財団法人日本不動産研究所と当社だけでした。

私どもは、全国の金融機関の担保評価を行っていましたので、すでに全国の不動産鑑定士や調査員とネットワークを構築していました。そうした体制整備をいち早く構築していたことが、独占的に仕事を受注できた大きな要因と言えるでしょう。その分、仕事量も多く非常に大変でしたが、会社も急成長することができました。

そういうわけで、当社のお客様は金融機関や保険会社がメインでしたが、平成20年頃から少しずつ会計人と連携する機会が出てきました。

ー会計人と連携するようになったキッカケは?

金融円滑化法の施行などで『事業再生』にスポットが当たり、全国の監査法人や税理士法人が事業再生やM&Aに注力する中で、不動産の鑑定評価で当社を利用していただく機会が増えてきました。

一方、個人の税理士先生からも税務対策などの一環として不動産評価を依頼されるようになり、その頃から会計人との連携を強く意識するようになりました。特に、中小企業の世代交代が進む中、今後、不動産の価値判断が求められてくると思いますので、税理士先生との連携をさらに深めていきたいと考えています。

ー三友システムアプレイザルのサービスの特徴を教えて下さい。

当社の約30名の所属鑑定士が、全国約650名の提携不動産鑑定士・調査員と連携し、当社がコントロールタワーとなって処理方針を定め、品質を一元管理することで、広域にまたがる複数案件を一律の基準で評価・調査できるのが大きな特徴です。現地調査が必要なケースや、遠隔地の物件の確認等には非常に便利だと思います。現地調査が必要なケースとしては、公法規制の確認、建物の品質に応じた建物価格の把握、担保・資産価値を毀損する要因の把握などが挙げられます。

正式な不動産鑑定評価は15万円からですが、不動産鑑定士による価格調査なら5万円から、不動産の現地調査なら2万5千円から行っています。特に、遵法性に問題がある不動産も多く見受けられますので、リスク対策という観点からも現地調査を行っておくべきだと考えます。

ー遵法性に問題があった事例などがあれば教えて下さい。

例えば、M&Aに関連して不動産調査を依頼された時、用途性の問題、遵法性の問題、消防法の問題などを検証すると、いずれも抵触してM&Aの対象となり得ないケースがありました。実際、そのようなエンジニアリングレポート(不動産証券化、M&Aや事業再生などの適正評価手続における物的調査として、建物の現状を調査して報告するもの)を提出して、M&Aがご破算になったこともあります。担当のコンサルタントからすごく怒られましたが、その後、そのコンサルタントも事前に分かって良かったと語っておられました。

ー小規模の物件でもチェックしておいた方がいいのでしょうか。

そうですね。検査済証未交付の建物を用途変更したり、増築するケースは珍しくありません。上場会社では、中古物件を購入する際にエンジニアリングレポートを取ることが常識となっていますが、個人の方や中小企業の場合「値段が安いか高いか、税金がどうなるのか」そういったことばかりに目が向き、物件のリスクには関心が低いのが実情です。

遵法性に適合しているかどうかは、税務の範囲ではありませんが、税理士の先生が関与した物件で火災などが発生し、遵法性に不適合な建物であることが後になって発覚すれば、責任問題にも繋がってきます。物件購入者が関与先というケースも多いと思いますので、今後も長いお付き合いをするのであれば、不動産の現地調査・鑑定評価は行っておくべきだと考えます。

ー現地調査の費用面が気になるところです。

エンジニアリングレポートを依頼すればすべてを網羅出来ますが高額です。しかし消防点検の届出の記録や未登記の増築の確認といった現地調査は、安価で行うことができます。当社では、不動産の重要事項説明に含まれる不動産のリスクについての所見部分だけを抽出して、取引対象の不動産のリスクに特化したレポートを安価で提供しています。

不動産の価格査定をより簡単でリーズナブルで行いたいと考える方は、当社の関連会社である株式会社タスが提供するTAS-MAPを利用されています。

ーTAS-MAPについて詳しく教えて下さい。

TAS-MAPとは、土地・建物(戸建)、 マンションをお客様ご自身で査定することができるシステムです。簡単で分かりやすい操作性で、わずか3分で物件特定から査定まで行うことができます。

土地・建物については、地価公示・都道府県地価調査、相続税路線価、固定資産税路線価、標準宅地価格に加え、当社の鑑定事例(標準価格)等の豊富なデータベースに基づき精度の高い評価を実現します。また、マンションについては、住宅情報提供会社の豊富なマンション事例を採用し、明海大学不動産学部の協力を得て統計手法(ヘドニック手法)に基づいて開発された算出ロジックにより適正な評価を実現しています。

インターネットにつながったPCさえあれば利用できるASPサービスのため、導入コストも不要、登録料3万円(税別)、月額基本料金は1万円(税別)で、案件ごとに2千円〜の従量制で活用できます。当初は金融機関の融資審査や不動産仲介会社の査定に活用されてきましたが、最近では税理士事務所の登録・活用がずいぶん伸びています。

ー三友システムアプレイザルのサービスとTAS-MAPを両方利用している方も多いのでしょうか。

日常的にTAS-MAPを利用し、そのシステムで対応できない種類の不動産、例えばオフィスや店舗、病院・介護施設等の特殊用途物件、旅館やホテルなどの事業収益物件の価格査定などを当社に依頼される方も多いですね。

また、当社ではTAS-MAPを活用したサービスも行っています。評価に客観性を付与すると共に、外注によって作業負担を軽減できるメリットがあります。TAS-MAPで前捌きを行い、重要性に応じて鑑定評価を考える事でコストコントロールが出来るのではないでしょうか。

ー最後に、今後の抱負をお聞かせ下さい。

不動産の鑑定評価や不動産調査などは、昔と比べてより厳密な正確性と公正性が求められる時代となっています。

当社は不動産の時価評価に大きな影響を与える、価値を毀損しそうな事象に一歩踏み込むのがデューデリジェンスの役割であると考 え、税理士の先生方や関与先のニーズに対して全力でお応えしてまいります。またIFRS移行や、M&Aにおける時価評価の必要性の高まりに対応して、鑑定評価の対象を不動産(土地・建物)のみならず、機械装置、船舶など全ての有形固定資産に拡大する事を目指しています。

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