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消費税増税効果は?住宅ローン減税は必要? あまりに複雑な住宅税制

経済学からみた不動産市場(第8回)

浅田義久
日本大学経済学部教授


安倍首相が2019年10月1日に予定通り消費税を8%から10%に引き上げる予定であると表明し,景気への影響を緩和するため,様々な対策が上がっています。


まず,この消費税という言葉が良くないということを知っておいてください。

消費税というと消費する財・サービスに課税すると思われますが,実際は付加価値税です。住宅も,自動車も投資財ですから,“消費税”であれば,毎年の消費額,住宅では家賃(持家では帰属家賃)に課税すべきです。

ところが,購入額に課税し,中間投入財の場合は還付していますので,これは“付加価値税”です。そのため,土地の売買は付加価値が発生しないと言うことで課税されません。消費税はむしろ固定資産税に該当します。

ところが,面倒なことに住宅の売買では従来から印紙税,登録免許税,不動産取得税など様々な税が取引時に課税されています。贈与を使ったら贈与税もかかります。これに,1989年4月に消費税が加わったのです(以下,購入時に課税される税金を一括税と記します)。

例えば,2000万円の住宅(建物のみ)を購入すると,160万円の消費税を含め,約190万円の一括税が課税されることになります。住宅は購入時以外にも,保有時に固定資産税や都市計画税,特別土地保有税,売却時には譲渡所得税などが課税されます。また,保有期間には後述の住宅借入金等特別控除(いわゆる住宅ローン減税,以下住宅ローン減税と記す)によって所得税,住民税が軽減されます。また,不動産取得税や固定資産税は住宅の規模や性能によって軽減されるなど非常に複雑です。


さて,今回消費税率が8%から10%に引き上げられることになっています。2014年4月に5%から8%に引き上げた際に,住宅着工戸数が2012年度から2013年度に駆け込み需要として10.6%増加し,2013年度から2014年度に10.8%減少したことから(消費税導入時にはより大きい駆け込みと反動があった),今回はこの駆け込みと反動がないように対策を講じるとしています。

そして,その対策として考えられているのが住宅ローン減税です。

これは,所得税を住宅ローン残高の一定限度額だけ控除するというもので,1972年度からあった制度ですが,1989年消費税導入時以降は景気対策に用いられるようになってきました。特に,バブル崩壊後の不況に対して,1999年度に大きく拡張され,15年間最大で約590万円の所得税控除となっています。2008年にもリーマンショックの対策としても拡張されています。

現在は,年末の住宅ローン残高のうち4000万円以下の部分に対して,10年間は1.0%(40万円限度)が控除されます。この控除限度額はかなり高額で,所得が650万円で配偶者1人,扶養者2人でおおよそ35万円の所得税ですので,このローン減税を使い切る人は中堅以上ということになります。

住宅は必需財なので低所得者には価格非弾力的で,高所得者は投資額に対して弾力的になります。すると,この住宅ローン減税の拡張は高所得者用ということになります。せめて,控除年限の拡張にして欲しいものです。また,この制度だとリフォームを抑制する効果もあり問題です。


さて,もう一つ問題があります。上記のような駆け込み需要があると,資材価格や労働賃金が高騰し,反動で需要が減ると資材価格や労働賃金は低下します。2013年から2014年にかけて住宅建築物価が約2%上昇していますが,2015年にはマイナスとなっています。それに,バブル期にも言われましたが,忙しすぎて手抜きになっている可能性もあります。

このように,消費税引き上げ後の方が実質的には安い可能性すらあります。タスもこのような実質価格の予想も出すべきでは?

また,建設業界からみても変動がおおすぎると,経営を維持することは難しくなります。政府は,上記のような物価水準の変動もあることをアナウンスする方が妙な経済対策を取るより効果があると思います。


ここで,経済学的に非常に重要な“資本コスト”の観点から増税効果を簡単にお話しします。

住宅の資本コストとは住宅を保有する費用のことです。これはそう簡単ではありません。まず,機会費用として利子費用があります。これは,他の金融資産で保有していたら得られた収入です。次に,償却費用で,住宅は年々傷みが生じ,年を経るうちに住宅は劣化していき,この価値の減耗分を償却費用となります。これは建築技術によって低下していきます。これに値上がりならキャピタルゲインとして控除し,値下がりならキャピタルロスとして費用となります。これに税金を加えたものが住宅の資本コストです。

実は,消費税引き上げの効果より償却率やキャピタルゲイン(ロス)の変動の方が影響は大きいのです。また,理論的に検討すると一括税は償却資産にも課税していることになり,この点からもあまり良い税制とはいえません。


この資本コストによって住宅着工が決まることは分かっていますが,なかなかその情報を手にすることができません。タスのお仕事では?

浅田 義久
浅田 義久

日本大学 経済学部 教授 [経歴]上智大学大学院経済学研究科博士課程修了 三菱総合研究所、明海大学等を経て、現職 [専門]経済政策、財政・公共経済

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