人生100年時代?-私の人生設計は見直しするの

経済学から見た不動産市場(第15回)


浅田義久
日本大学経済学部教授


先月は改元だったのですが,今月1日は私の61歳の誕生日。それを記念して,人生設計の見直しが必要かを考えていきます。

なんだか,金融庁の審議会が出した報告書についてもちゃんと考えないといけませんから。前回までにみた,投資の最適化も,人生何年になるか全く分からないと,効率的な貯蓄もできませんからね。政府は人生100年時代といって貯蓄等の見直しを勧めています。これが金融庁の審議会が出した報告書だったのですが。


まず,各個人がどれほど長寿化したかを考えましょう。

以前にもお話しましたが,平均寿命は1960年から2017年までに,女性で70.2歳から87.3歳に17年も伸びています(男性は16年)。ところが,この間に女性65歳の平均余命は10年しか伸びていません(男性は8年)。平均寿命(その年に生まれた人の平均余命)が伸びたのは若くして亡くなる人が少なくなってきたことの寄与が大きく,65歳以降の平均余命はそれほど長くなっていないのです。

少なくとも私が生きている間に人生100歳時代になるとは思えません。

もう一つ重要なことは健康寿命です。健康寿命とは介護を受けたり、寝たきりになったりせず日常生活を送れる期間です。統計が2001年以降しかないのですが,2001年から16年にかけて平均寿命が伸びた年数は健康寿命が伸びた年数にほぼ一致します。ようするに,健康な時期が8年延びたと思えばいいのです。

そして,ライフサイクルを考えるとより納得すると思います。1960年から2015年までに結婚年齢が男女とも4~5歳ほど上昇し,第1子出生年齢も5歳ほど上昇しています。すると,結婚後や子供が家を出てからの期間は5年ほど伸びたことになります。

で,上記のように健康寿命も8年長くなっていますので,有配偶者世帯にとっては,結婚後のライフスタイルはそれほど変わっていないことがわかります。

ようするに,健康な時期が長くなったので,その間,仕事をしていれば年金に頼る必要もなくなるはずです。定年延長はこれをみても良い政策といえませんか?


さて,それでは全く問題が無いかというと,実は大きな問題があります。

日本の年金制度は積立方式ではなく,賦課方式になっています。厚生年金の世代別純受益を試算すると(保険料率再引き上げとして,40年間加入,生涯所得を3億円とすると),1940年生まれは+3070万円,55年生まれの人は+210万円ですが,2010年生まれは-2840万円と損益になります(鈴木亘(2010)『社会保 障の「不都合な真実」-子育て・医療・年金を経済学で考える』日本経済新報社)

やはり,年代別の所得移転が起きているのです。そして,それを考慮して,若年層の貯蓄率(保険や年金を含む)は徐々に上がっています。やはり若い人は大変だし,資源の最適配分にはなりません。

ついでに,金融庁の報告書で95歳まで生きる際には2000万円の貯蓄が必要だという議論を補完すると,70歳以上の2人以上の全世帯平均では純貯蓄で2300万円です。平均的な人は年金だけで暮らしていけると思っておらず,ちゃんと貯蓄をしています。しかも,93%の世帯が持家世帯なので,資産はもっと多くなります。

平成29年の70歳の平均余命は男性で15.7年,女性で20.0年ですから,70歳から25年間生きる前提で2000万円必要なところを上記の純貯蓄は多すぎませんか?やはりみなさんリスクアバーターなんですね。ただ単に報告書を批判するのではなく,ちゃんと実態を把握し,対応することが重要だと思うのですが・・・・


保険や年金も強制貯蓄といわれ,放っておくと病気のためや,老後のための貯蓄をしないから,保険や年金制度があると思われています。ところが,ほとんどの人はリスクアバーターで,保険や年金制度は資源の最適配分のためにあると考えられます。

例えば,平均的に年10万円の医療費が必要だとします。健康保険が無い場合,あなたはどれくらい医療のために貯金をしますか?

読者の大半はリスクアバーターだと思いますので,10万円以上の貯金をすると思います。平均的に10万円で良いのにそれ以上の貯金をして,その結果,貯金が過大になり,消費が過少になります。

このようなリスクを全国民で負担するのが医療保険制度です。全国的には1人あたり10万円でいいので,貯蓄や消費が最適化されます。でも,現在の保険制度ではモラルハザードの問題があります。保険をかけていると病気に対するケアが薄れるというものです。対策としては,リスクの高い病気にのみ健康保険をあて,風邪や腰痛(現在,私は膝痛に悩まされていますが,病院には行っていません)などは健康保険を適応しないという策があります。


では,定年を5年程度延長して,年金制度を世代別所得移転が少なくなるように徐々に変えればそれで良いかというとそうではなくより重要な問題があります。

いわゆる団塊ジュニア(1971~74年生まれ)は非常に人口が多いのですが,彼らは大学を卒業する頃に就職氷河期(1990年から2005年頃)となり,就職率も悪く,その後も正規職員になった比率も低く,その結果,結婚比率,出生率も低下しました。彼らに対して,今回の成長戦略で対策を立てようとしていますが,これは本当に重要で,前述の純貯蓄は世帯人数が2人以上ですから,1人世帯は純貯蓄も低いはずです。この世代が高齢世帯になる前に何らかの対策を採らないと,日本全体の成長に対しても大きな影響を及ぼしてしまいます。


さて,さて,私の人生設計ですが,一般的に大学の教員は博士課程まで出て,教員になるまで時間が必要なので定年も長いのですが,私は修士課程を出てすぐ民間企業に就職したので,大卒の人と同程度の勤続年数を過ぎています。

もう,勤続疲労が出ていますので,リタイアしても良いと思うのですが,家人が許してくれません。

浅田 義久
浅田 義久
日本大学 経済学部 教授 [経歴]上智大学大学院経済学研究科博士前期課程修了 三菱総合研究所、明海大学等を経て、現職 [専門]経済政策、財政・公共経済
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