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コロナが不動産市場へもたらした影響と今後の見通し

新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)拡大の影響を受けて、多様な働き方が普及しつつあります。

また、テレワークの経験を踏まえて「すべての部署を必ずしも東京都心に立地しなくてもよい」という認識を持つ企業も広がりつつあります。地方においても、テレワークの推進とともに中心市街地への移転を検討している企業もあるのではないでしょうか。

さらに、関東経済産業局 地域経済部『地方移転に関する動向調査結果【概要版】』では、 コロナの影響により自治体への移住相談が増加傾向にあることも示されています。


このように、オフィス活用を見直す企業や郊外移転を検討する人が増加することによって、不動産市場の動向にも変化が生じていると考えられます。融資時の融資金額の判断や融資物件の時価を管理する金融機関などにおいても、不動産市場の見通しを把握しておく必要があります。

そこで本記事では、コロナ禍や税制改正により変化した不動産の考え方、不動産市場の今後の見通しを解説します。

出典:関東経済産業局 地域経済部『地方移転に関する動向調査結果【概要版】


もくじ[非表示]

  1. 1.居住地や働き方に対する考え方の変化
    1. 1.1.居住地に対する考え方
    2. 1.2.働き方に対する考え方
  2. 2.2022年の税制改正が不動産市場に与える影響
  3. 3.コロナ禍がもたらした不動産市場への影響
  4. 4.まとめ


居住地や働き方に対する考え方の変化

コロナの影響により、テレワークやオンライン授業が普及しました。大規模なオフィスを都心部に設置するニーズが低下し、区分所有オフィスやレンタルオフィスなどに対する需要が高まっています。


居住地に対する考え方

内閣府が2021年11月に発表した『第4回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査』によると、20歳代の地方移住への関心が高まっていることが分かります。

そのうち、20歳代の地域別で見ると、東京圏の44.9%、東京都23区の49.1%が地方移住に「強い関心がある」または「関心がある」「やや関心がある」と回答しています。

居住地に対する考え方

画像引用元:内閣府『第4回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査




また、地方移住に関心のある東京圏在住者のうち、2021年9~10月に「地方移住に向けて行動をとった人」の割合を見ると、全世代のうち20歳代と30歳代の割合が高いことが分かります。


地方移住に向けて行動をとった人の割合

画像引用元:内閣府『第4回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査


これらの結果から、地方にある物件の需要が高まると推測できます。金融機関では、地方移住者向けの住宅ローンの提供や誘致企業への融資など、需要の変化に合わせた商品展開も求められてくるのではないでしょうか。

出典:内閣府『第4回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査


働き方に対する考え方

2021年6月に発表された内閣府『第3回 新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査』では、通勤時間の変化に関して、コロナ感染前と比べて通勤にかける時間が「大幅に減少した」または「減少した」と回答した人の割合は、東京圏で31.9%、東京都23区で44%との結果が出ています。


通勤時間の変化

画像引用元:内閣府『第3回 新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査



また、2020年12月に内閣府が発表した『第2回 新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査』では、通勤時間が減少した就業者のうち、今後も減少した通勤時間を「保ちたい」「どちらかというと保ちたい」と考える人が、東京圏で80.9%、東京都23区で79.4%いたと示されています。


通勤時間の継続希望

画像引用元:内閣府『第2回 新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査



さらに、『第3回 新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査』では、テレワークの利用希望に関する質問で、就業者全体の36%が今後も引き続きテレワークを中心に就業したいと回答しています。


テレワークの利用希望

画像引用元:内閣府『第3回 新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査



一方で、『第4回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査』によると、東京都23区における就業者のテレワーク実施頻度の変化では、2021年の9~10月で「テレワーク(ほぼ100%)」「テレワーク中心(50%以上)で、定期的に出勤を併用」と回答した人が31.8%、「出勤中心(50%以上)で、定期的にテレワークを併用」「基本的に出勤だが、不定期にテレワークを利用」と回答した人が23.4%との結果が出ています。


テレワーク実施頻度の変化

画像引用元:内閣府『第4回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査



これらの結果から、テレワークで働く人の割合が増加傾向にある一方で、基本的には出勤して仕事をする人も一定数いることが分かります。

そのため、都市部の駅に近い物件だけではなく、テレワークを実施する十分なスペースのある物件や郊外にある部屋数の多い物件などの需要も高まるのではないかと推測できます。

出典:内閣府『第2回 新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査
第3回 新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査
第4回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査



2022年の税制改正が不動産市場に与える影響

国土交通省は2022年度税制改正の大綱において、住宅ローンの減税が延長されることが盛り込まれたと発表しました。

住宅ローン減税の延長は、消費者が不動産を購入する意欲に少なからず影響を与えると予測できます。2020年3月22日に、国会で成立された税制改正の概要は以下のとおりです。


住宅ローン減税

  • 入居に係る適用期限を4年間(2022~2025年)延長
住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置
  • 受贈に係る適用期限を2年間(2022~2023年)延長
  • 非課税限度額は、良質な住宅は1,000万円、その他の住宅は500万円
  • 既存住宅の築年数要件について、住宅ローン減税と同様に緩和
新築住宅に係る固定資産税の減額措置
  • 適用期限を2年間(2022~2023年度)延長
  • 土砂災害特別警戒区域等の区域内で、都市再生特別措置法に基づく市町村長による適正な立地を促すための勧告に従わずに建設された一定の住宅を適用対象から除外

国土交通省『住宅ローン減税等が延長されます!~環境性能等に応じた上乗せ措置等が新設されます~』を基に作成


今回、税制改正に住宅ローン減税の延長が盛り込まれた背景には次のような理由が挙げられます。

  • 中間層による良質な住宅の取得の促進
  • 住宅投資の喚起
  • 環境性能等に優れた住宅の普及拡大

2019年の消費税増税やコロナの感染拡大で落ち込んだ経済の回復を図るために、中間層が不動産を購入しやすい環境を整える目的があります。

出典:国土交通省『住宅ローン減税等が延長されます!~環境性能等に応じた上乗せ措置等が新設されます~



コロナ禍がもたらした不動産市場への影響

株式会社タスが行った『不動産市場アンケート結果報告』によれば、不動産市場において2021年の繁忙期にコロナ禍による何らかの影響があると回答したのは、全体の97%でした。(有効回答数174名)

そのうち、70%が需要の減少や価格の下落に影響があると考えられると回答しています。



また、テレワークを導入する企業が増えたことで、地方への移住者も増加しました。同アンケートでも、60%を超える企業が地方・郊外への移住が「増加した」「やや増加した」と回答しています。



企業の借り上げ住宅の需要については、65%が「減少した」「やや減少した」と回答しています。


さらに、2022年4月の『賃貸住宅市場レポート』では、『TAS-MAP』のユーザーさまを対象に実施したアンケートの結果をご紹介しています。そのうち、間取り別の景況感は次のとおりです。




首都圏の結果を見ると、家族向けの40%、カップル向けの33%が「⾮常に良い」「やや良い」と回答しています。

一方で、単⾝者向け(20m2以上)の45%、単⾝者向け(20m2未満)の61%は「⾮常に悪い」「やや悪い」と回答しており、二極化が進んでいるといえます。

単身者向けの市況に関しては、首都圏・首都圏以外ともに悪化していることが分かります。


これらの結果から、コロナ禍で人々の生活基盤や働き方などが変化したことが、不動産市場の需要に少なからず影響を与えているといえます。



まとめ

この記事では不動産市場について、以下の項目で解説しました。

  • 居住地や働き方に対する考え方の変化
  • 2022年の税制改正が不動産市場に与える影響
  • コロナ禍がもたらした不動産市場への影響

コロナの影響でテレワークが定着したこともあり、居住地や働き方などに対する考え方には変化が見られます。

また、不動産市場の見通しについては、多くの企業がコロナの影響を受けていることを踏まえて、コロナが収束に向かうまではコロナ禍以前の状態に市場が回復することは難しいと考えられます。

一方で、住宅ローン減税の延長によって住宅の取得や投資を行う消費者が増えれば、不動産市場が徐々に回復へ向かうとの見方もできます。


空室率や募集期間、賃料指数など最新の賃貸住宅市場に関する動向についてさらに詳しく知りたい方は、下記の賃貸住宅市場レポートもあわせてご覧ください。



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