
陰陽図で見る東京23区の浸水域
TASレポート(第1回)
株式会社タス
田口 朋晃
平成30年7月、西日本を中心に集中豪雨がありました。
その被害は大きく、洪水、土砂崩れ、床上浸水などを各地に引き起こし、最終的には200人以上の死者を出しました。
そんな今回の災害の特徴の一つとして床上浸水が概ねハザードマップに近い形で広がっていたことが挙げられます。自身が住んでいる地域や通っている職場・学校がある地域のハザードマップを確認しておくことは非常に重要だと言えます。
私の職場は八丁堀ですので、東京23区でもし万が一河川の氾濫があり浸水が起きた場合どうなるか地図で見ていこうと思います。まずは地形の確認からです。
下に示した図1のベースは「陰陽図」という地図です。東京23区の地形が一目瞭然ですね。この様に東京23区は西部が高台、東部が低地ということになります。また、青い線で示しているのは23区を流れる主だった河川です。
図1 東京23区の地形と主な河川
地形と河川を把握したので、今度は河川氾濫が起きた場合の浸水域を見てみましょう。
ここでは国土交通省国土政策局の浸水想定区域データを利用しました。図1の河川が全て氾濫を起こした場合、図2のようになります。
図2 東京23区の浸水域
低地である23区の東部は軒並み浸水してしまいます。中でも荒川と隅田川に挟まれた北千住駅周辺は5m以上の浸水が想定されています。
その一方で、神田川周辺は浸水エリアが河川の付近にしかありません。
この地図から浸水被害は地域の高低差と地形がダイレクトに関係していると言えます。もし東京の東部や南部(多摩川付近)に住むのであれば、避難所に指定されている建物の高さは確認しておいたほうが良いかもしれません。
今度は都心部を見てみましょう。図3は東京駅周辺の浸水想定になります。
荒川が決壊した場合、東京駅まで浸水する可能性があります。高潮などが重なると被害も拡大します。水位自体は1m未満ですが、経済面も交通も中心であることから、被害は甚大であると考えられます。日本全体への影響はどれほどの規模になるか想像がつきません。
浸水域のデータですが、各河川に想定降雨量が設定されており、それを元に浸水範囲や量を算出しています。荒川の想定降雨量は3日間で548mmであり、今回の西日本の降雨量を見れば東京駅の浸水は起きうる事態であると考えられます。
そのような事態になれば、八丁堀にある弊社が入っているビルも当然浸水することになります。そういう状況で出社しているのかという問題は置いておくとして、自分の命を守るためにも自分の住んでいる地域や働いている地域のこういった情報は重要ですね。ちなみに八丁堀近くの避難所は京華スクエアです。京華スクエアは元小学校を改修した地域の複合施設で、3階建ての建物です。避難所に指定されているのは1・2階となっているため、避難所といえども、いざ浸水となれば1階が使えない可能性があります。複数の避難所を調べておくことも必要かもしれません。
図3 東京駅周辺の浸水想定
<陰陽図について>
陰陽図は朝日航洋株式会社が持っている特許技術で作成しました。都市部から山間部までの地形を詳細に表現できる地図であり、浸水想定のような高低差が非常に重要なファクターとなるテーマにおいて、ベースとして最適であると考え使用させていただきました。
<注意>
今回地図に起こしている浸水想定のデータは、各河川に紐付いています。ですので、河川の位置しだいでは浸水エリアが重複していますが、今回はより水位が高いほうを採用しています。
河川の氾濫に関する想定
- 芝川・新芝川:100年に一度の大雨 総雨量411mm(2日間)
- 神田川:総雨量589mm 時間最大雨量114mm
- 江戸川:200年に一度の大雨 総雨量318mm(3日間)
- 荒川:200年に一度の大雨 総雨量548mm(3日間) ※隅田川が流れている場所は全て荒川の浸水想定に含まれるため想定がない
- 中川・綾瀬川:100年に一度の大雨 総雨量355mm(2日間)
- 多摩川:200年に一度の大雨 総雨量457mm(2日間)
<参考>参考までに今回の西日本豪雨のデータを一部掲載します。
出典:気象庁ホームページ(https://www.jma.go.jp/jma/)
- 高知県,安芸郡馬路村,魚梁瀬(ヤナセ):48時間降雨量:1025mm、72時間降雨量:1319.5mm
- 高知県,香美市,繁藤(シゲトウ):48時間降雨量:759mm、72時間降雨量:985.5mm
- 岐阜県,郡上市,ひるがの(ヒルガノ):48時間降雨量:683 mm、72時間降雨量:868 mm
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