レインズデータから読み解く首都圏の中古マンション市場(第3回)


藤井和之
株式会社タス


前回(第2回)に引き続き、東日本不動産流通機構(レインズ東日本)が毎月発表している月例マーケットウオッチから、首都圏の中古マンション市場の実態を読み解いていきます。今回は最終回として「成約価格」に着目して解説していきましょう。

図1に首都圏の中古マンションの「成約㎡単価」と「新規登録㎡単価」の推移を示します。これまでと同様に季節変動を除するために12か月の移動平均を採用しています。

首都圏の中古マンション成約価格の㎡単価は上昇傾向にありますが、それに呼応するように新規登録㎡単価も上昇傾向にあります。また、首都圏全体でみると新規登録㎡単価は成約㎡単価よりも高い水準となっており、成約価格の上昇を見込んで新規登録時の価格を高めに設定する傾向があることを読み取ることができます。前回解説した通り、首都圏の中古マンションは前月在庫の6~10%程度しか成約しませんので、成約させるためには価格を新規登録時よりも下げるケースが多いと考えられます。

図1 首都圏中古マンション「成約㎡単価」と「新規登録㎡単価」の推移(12か月移動平均)
出典:東日本不動産流通機構 月例マーケットウオッチ


では、新規登録㎡単価からどのくらい価格が下がっているのでしょうか。

図2に首都圏の価格下落率(1 - 成約㎡単価/新規登録㎡単価)と前回ご紹介した対前月在庫成約率の推移を示します。

首都圏全体では、価格下落率が10%を中心としてサイクルを描いています。そして価格の下落率が10%を超えると、つまり成約㎡単価よりも新規登録㎡単価10%以上高いと対前月成約率が悪化し、10%より低いと対前月成約率が上昇している様子が観察できます。

図2 首都圏中古マンション価格下落率と対前月在庫成約率の推移
出典:東日本不動産流通機構 月例マーケットウオッチ


もちろんこれには地域差があります。図3に東京都、図4に埼玉県、図5に千葉県、図6に神奈川県の価格下落率と対前月在庫成約率の推移を示します。東京都では成約率が反転する閾値の価格下落率は約10%、埼玉県では約4%、千葉県では約9%、神奈川県では約0%です。

本コラムで分析したように、新規登録価格が高くなりすぎる(低くなりすぎる)と成約価格が下がる(上がる)という形で市場の調整が行われていることがわかります。市場の本来の姿を見極め、適切な価格設定を行うことが中古マンション売却のカギとなります。





図3 東京都中古マンション価格下落率と対前月在庫成約率の推移
出典:東日本不動産流通機構 月例マーケットウオッチ


図4 埼玉県中古マンション価格下落率と対前月在庫成約率の推移
出典:東日本不動産流通機構 月例マーケットウオッチ

図5 千葉県中古マンション価格下落率と対前月在庫成約率の推移
出典:東日本不動産流通機構 月例マーケットウオッチ

図6 神奈川県中古マンション価格下落率と対前月在庫成約率の推移
出典:東日本不動産流通機構 月例マーケットウオッチ

藤井 和之
藤井 和之
株式会社タス 主任研究員 兼 新事業開発部長 [経歴]東京電機大学大学院 理工学研究科 修士課程修了 清水建設株式会社入社。その後不動産投資分析ソフトの世界標準であるARGUSを発売するRealm Business Solutions(現ARGUS Software)、不動産ファンドの日本レップ(現Goodman Japan)を経て2009年より現職。 賃貸住宅の投資分析に用いることができる指標が少なく苦労した経験から、賃貸住宅の空室率や募集期間、更新確率等の時系列指標を開発。それらの指標と公的統計を用いた賃貸住宅マーケットの分析を行っている。
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