ブラックボックスは嫌い?-私は経済学の一部のことしか理解できませんが


経済学からみた不動産市場(第43回)

浅田義久
日本大学経済学部教授

 

 

 

 ちょっと,前回コラムから時間が空いてしまいましたが,大学が対面授業に戻ったため,やや忙しくなって申し訳ありません。

 さて,6月16日に東京地裁がグルメサイトの運営会社に評価点を巡る裁判で3840万円を支払うよう命じました。この裁判は2019年にグルメサイトの評価点が最大0.45点下げられたチェーン店が,売り上げが下落したとして6億4000万円の損害賠償を求めたものです。

 グルメサイトはアルゴリズムを定期的に変更していると公表しています。もし,そのアルゴリズム自体を公表してしまうと評価点をあげるためだけの作業を行う事業者も出てくると思います。以前お話ししたように,コロナの新規感染者数を,計量経済学を用いて推定し公表すると人々の行動自体が変化してしまい予測できなくなります。私のような大学教員にとっては,予備校等が公表している大学の偏差値予測が心配になります。その予測のアルゴリズムはどのようなもので,予測によって入学志望者が変化した場合どのように対応してくれるのでしょうか。


 問題は,不動産関連ではどのような問題があるかと言うものです。

 タスを含め多くの不動産テック企業が地価や家賃を予測しています。おそらく各企業ともヘドニック分析を用いていると思いますが,この予測によって収益が減ったと言われた場合はどのように対応すれば良いのでしょうか。

 これは従来型の不動産仲介業でも同じことがいえます。例えば,ある日,大家さんが月4万円で不動産業者Aからの提示で契約したとします。ところが,翌日5万円の借り手が見つかった場合どうしますか。まあ,ナッジ(nudge)だとやや異なってくるんですが,ナッジかナッジでは無いのかは非常に難しく,私でも判断できないと思います。ナッジについてはまだお話ししていませんでしたね。これはどこかでお話しします。


 みなさんは,全てのことを詳細まで理解したいですか。日銀総裁が「値上げ許容度」と言って批判されましたが,批判している方々は金融論をちゃんと理解しているのでしょうか。私は仕事柄ある程度PCを使えますが,CPUの中でどのような作業が行われているかは全く分かりません。若手の経済学者の中ではGPUを計算作業に使うプログラムを使っているような人も居るそうですが,私には珍紛漢紛です。上記で述べたヘドニック分析など不動産に関する経済理論はある程度知っていますが,それ以外はほとんど門外漢で,学生時代に囓った金融政策の効果も現在はあまり理解していません。非常に難しい問題ですが,社会全体の成長を高めるためには,各々の人が特化した分野をどんどん深めて生産性を上げる専門化の経済が発揮される必要があります。私は64歳なのでこれ以上難しいことを理解したくないので専門家にお任せします。

 

浅田 義久
浅田 義久
日本大学 経済学部 教授 [経歴]上智大学大学院経済学研究科博士前期課程修了 三菱総合研究所、明海大学等を経て、現職 [専門]経済政策、財政・公共経済
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