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再開発の穴場?未消化容積率が多い街を探しあてるには

■summary

  • 容積率に余裕があり、開発余地のあるエリアを発見する方法を紹介。

  • オープンデータの建物3Dモデルと用途地域を活用した。

  • GIS(地理情報システム)を用いた分析によって、指定容積率に対して容積率を使いきれていない建物が多いエリアを抽出した。

  • 文京区西片一丁目では、約6割の建物が指定容積率に満たないことが明らかになった。


◆はじめに

東京の街を歩いていると、ビルの谷間に取り残されたような路地裏の存在に気づかされます。こうした通りは時に風情を感じるものではありますが、防災や土地の有効活用の観点から、再開発の対象となってきました。再開発時の収益性を考える上では、既存の建物のサイズと、指定容積率との関係を把握することが求められます。今回は誰でも無償で利用できる「オープンデータ」の用途地域データと建物3Dモデルを使って、指定容積率に満たない建物が多く存在する「未消化容積率が多い街」を探してみましょう。

◆用途地域データ

「オープンデータ」の用途地域データや建物3Dモデルは、GIS(地理情報システム)と呼ばれる専用のソフトを用いることで、可視化することができます。図-1に、都営地下鉄三田線・大江戸線春日駅(文京区)周辺の用途地域と建ぺい率・容積率を示します。左の数字は建ぺい率、右の数字は容積率を表しています。南北方向の白山通り沿いは商業地域であり、容積率が600%と高い一方、中央付近の第一種低層住居専用地域の容積率は150%と低く抑えられています。


図1 春日駅周辺の用途地域


◆建物3Dデータ

図-2に、建物3Dモデルを示します。建物3Dモデルは、その名の通り従来の平面図に加えて、建物の高さ情報を含むデータであり、現在東京23区や札幌市、大阪市など主要都市で整備が進んでいます。便宜的に1階=3.5mと仮定し、端数を四捨五入することで建物の階数を算出し色分けしています。高層建築は幹線道路沿いに集まっているものの、建物の高さや形状には、ばらつきがあるようです。

図2 春日駅周辺の建物総階数(推定)


◆用途地域と建物3Dを統合する

GIS(地理情報システム)を用いることで、図―1の用途地域の情報を、図-2の建物3Dモデルの一棟一棟に転記することができます。図-3は、転記した情報を基に用途地域別に色分けで示しています。地図では描かれていませんが、用途地域だけでなく、建ぺい率や容積率といった情報も併せて転記されています。

図3 春日駅周辺の建物別用途地域


◆未消化容積率多い街を探し当てるには?

統合した建物3Dデータを用いて一定条件のもと算出した建物一棟一棟の容積率と指定容積率を比較することで、未消化容積率を算出することができます。つまり、各建物が本来どの程度建て増しすることができたかどうかを一括して表現ができるということです。

図-4では、指定容積率に対して各建物がどの程度の容積率で建てられれているかを示しています。例えば、指定容積率が300%のエリアに対して容積率240%の物件は、容積率充足率は80%と表示されます。容積率充足率が100%未満の建物の分布を確認すると、建ぺい率の上限が厳しい第一種低層住居専用地域だけでなく、幹線道路周辺にも散見されます。紫色の建物が集中しているエリアは、特に開発余地が残されていることが示唆されます。文京区西片一丁目では、エリア内の全ての建物350棟の内、212棟と約6割が指定容積率を消化しきれていないことが分かりました。

図4 春日駅周辺の建物別容積率充足率


◆おわりに

未消化容積率の多いエリアを特定する方法についてご紹介しました。正確な建ぺい率・容積率の算出にあたっては前面道路の幅員による斜線制限や角地、地区計画などを考慮する必要がありますが、地域的な傾向をつかむ上ではオープンデータの活用でも充分対応できます。不動産マーケット分析「ANALYSTAS」では、こうしたオープンデータを含むあらゆるデータの利活用・組み合わせ方法をご提案しております。ご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

四釜 想
四釜 想
株式会社タス データソリューション部
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