私たちは合理的です −危ないところには出ませんよ

経済学からみた不動産市場(第37回)

浅田義久
日本大学経済学部教授

 

 前回のコラムではCovid-19新規感染者数がどのような要因で決まってくるかを説明しましたが、おそらく今回が最後のCovid-19関連だと思います。

 さて、前回のコラムで新規感染者数がワクチン接種率修正人出によって決まってくるとお話ししました。今日は、この人出に関してお話ししていきます。前回は、人出が新規感染者数で決まるとお話ししました。これだと、因果関係が分からないと思われるかもしれません。ところが、新規感染者数は12日前の人出(ワクチン接種率修正人出)で決まってきます。そして、人出は前日までの新規感染者数(1週間平均)で決まってきます。

 下図を見てください。下図はトレンドを除去した東京の主要繁華街の20時台の人出です(対数を取っています)

 外出は前日の感染者数によって決まってきます。前回お話ししましたが、新規感染者数は12日前の人出で決まります。ところが、その人出は前日の新規感染者数(約2週間前の人出で決まる)で決まります。すると、新規感染者数が増加し始めるころは、12日前の新規感染者が少ないため、人出が増え、より新規感染者が増加します。そして、新規感染者がある程度増加すると、人出が減少し始めます。その結果、徐々に新規感染者数の増加率が低下していきます。これで感染者率の周期が形成されることになります。


 この図からもう一つ重要なことが分かります。果たして、上図から緊急事態宣言やまん延防止措置が人出に影響したかということです。特に、第5波といわれている7月12日から10月1日をみてください。8月中旬から新規感染者数が減少し始めると緊急事態宣言中なのに人出が増加しています。第4波でも同じです。ただし、人出にあまり影響しないといっても緊急事態宣言やまん延防止措置が無駄だということではありません。医療体制の整備やその逼迫度のアナウンスなどは非常に重要です。

 もう一つ、興味深いのは、ワクチン接種率はあまり有意に効かないということです。ワクチンを接種すれば感染者数が増えても外出するモチベーションがでるような気がしますが、どうやらワクチンを接種していても市中の感染状況で外出を決めているということです。かなり外部性を考えた良い行動だと思います。


 前回お話ししましたが、ここで新規感染者数が1%増加したら、どのくらい人出が減るかが重要になってきます。これが弾力性で、東京は-0.098、大阪は-0.053です。これは東京では新規感染者数が1%増加すると、東京では人出が0.098%減少する、大阪では0.053%減少するということになります。さて、2021月11月4日現在の人出は、東京は昨年より少なく、コロナ前(2019年同日)の65%ですが、大阪は既に昨年より増えており、コロナ前の78%にまで増えています。弾力性が小さい分、戻るスピードが速くなっています。また、ワクチン接種率(1回目)も11月3日現在で東京が71.7%なのに対して、大阪は68.6%です(沖縄は62.3%)。ちょっと不安ですね。

 おそらく、Covid-19関連は今回が最後になると思いますが、私たちは結構合理的な行動を採っているんです。

浅田 義久
浅田 義久
日本大学 経済学部 教授 [経歴]上智大学大学院経済学研究科博士前期課程修了 三菱総合研究所、明海大学等を経て、現職 [専門]経済政策、財政・公共経済
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