時価評価の意味と計算方法|評価業務効率化のポイントを紹介
不動産の時価評価とは、不動産の会計上の資産価値を現時点の価格で評価する方法です。評価方法の一つに、不動産の取得時の価格(簿価)を用いる方法があります。
時価評価することで、不動産の現在の価値を客観的に評価できます。ここでは、企業会計でも必要となる不動産の時価評価の概要と計算方法を解説します。
もくじ[非表示]
- 1.時価評価の計算方法
- 2.時価評価のメリット・デメリット
- 3.時価評価を行う業務の流れ
- 4.システム活用で業務効率化を実現
- 5.まとめ
時価評価の計算方法
国土交通省は、不動産鑑定評価の手法を原価法、取引事例比較法、収益還元法の3つに大別しています。これらの手法によって得られた価格を調整して最終的な鑑定評価額を決定します。
出典:国土交通省『不動産鑑定評価基準等の改正について』
原価法
原価法とは、不動産の再調達価格に着目して不動産を評価する方法です。
この方法では、その土地を購入して、今と同じ建物を建てると仮定します。その価格に、建築後の経過年数による減価を差し引いて価格を算出します。なお、原価法により算出された価格を積算価格といいます。一般的な計算式は、以下のとおりです。
▼積算価格の計算式
積算価格 = 単価 × 総面積 × 残存年数* ÷ 耐用年数
*残存年数:耐用年数から築年数を引いた数
取引事例比較法
取引事例比較法とは、対象となる不動産と似た条件の不動産の取引事例と比較して評価する方法です。
不動産は一点物であるため、同じ商品と比較して価格を決めることができません。しかし、似た条件の不動産の取引価格を参考にすることは可能です。
類似する取引事例を複数選択して、その不動産特有の事情に基づく補正(事情補正)や値上がり・値下がりを加味した修正(時点修正)を行います。そして、地域要因・個別的要因を考慮して価格を決定します。なお、取引事例比較法により算出された価格を比準価格といいます。
収益還元法
収益還元法とは、その不動産が将来的にいくら利益を生むか考慮して不動産を評価する方法です。
アパートや賃貸マンションなど、投資用の収益物件は家賃収入による利益を生み出すため、今後どれだけの利益が見込めるかによって不動産の価値が変わります。したがって、収益還元法は投資用収益物件を査定する際に使われることが多いです。
収益還元法による算出方法には、直接還元法とDCF(Discounted Cash Flow)法があります。
▼収益還元価格の計算式
収益還元価格 = 1年間の純利益* ÷ 還元利回り
*1年間の純利益とは…1年間の収入から1年間の経費を引いた金額。また、還元利回りとはその不動産から得られる利回りを指す。
▼還元利回りの算出方法
- 国土交通省の『土地総合情報システム』を利用する方法
- 不動産会社が公表している利回り相場を参考にする方法
1つは、国土交通省の『土地総合情報システム』を利用して周辺の取引事例を調べ、類似物件の利回りを参考にする方法です。対象不動産と類似の不動産の取引事例から利回りを求め、地域要因および個別的要因の違いに応じた補正を行うことにより還元利回りを算出します。
もう1つは、不動産会社が公表している利回り相場を参考にする方法です。例として、一般財団法人日本不動産研究所が公表する不動産投資家調査を参考にできます。
なお、DCF法は、家賃の下落率や空室リスクなどの要因を加味して詳細な分析を行う方法です。計算式は複雑になりますが、より正確な結果が得られます。
DCF法について詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。
▶『収益評価の基本のキ(第4回)「不動産の利回り」ちゃんと理解していますか?』
時価評価のメリット・デメリット
時価評価は、不動産の価値を把握するうえで非常に有益です。メリットとデメリットを理解して有効に活用しましょう。
メリット
時価評価の大きなメリットは、現時点での不動産価値を正しく評価できることです。
取得時の価格と現在の価格がかけ離れている場合、取得時の価格だけで評価をすると判断を誤る可能性があります。不動産の利益の現状が開示されれば財務の秘匿性が解消され、正確な情報に基づいて取引が行われるようになります。
デメリット
時価評価のデメリットは、評価した時点での市場変動に価格が左右されてしまうことです。
不動産は経済や社会など外的な要因によって価格が左右されやすい資産です。これは、評価するタイミングによってある程度価格を操作できることを意味しています。時価評価は評価者の主観が反映されやすい評価方法のため、不動産鑑定士による鑑定評価の利用や複数人による社内でのチェック体制の構築が必要と考えられます。
時価評価を行う業務の流れ
時価評価を行うときは、以下の流れで業務を進めます。
- 対象不動産の土地と建物について公的資料で確認する
- 鑑定評価に必要な資料を収集して整理する
- 収集した資料に基づき価格を形成する要因を分析する
- 対象不動産に合った鑑定評価方式を適用する
- 対象不動産の価格形成を説明できるよう調整する
公的資料の確認にあたっては、登記簿謄本(登記事項証明書)や建物の図面などを用います。そのほか、価格形成に関する資料や建設事例・取引事例に関する資料が必要です。
国土交通省は、原価法・取引事例比較法・収益還元法のすべての併用を推奨しており、依頼者に価格決定の過程や前提条件を正確に分かりやすく説明するよう求めています。
システム活用で業務効率化を実現
『TAS-MAP』は、不動産の時価評価業務を効率化できるASP(アプリケーションサービスプロパイダ) サービスです。
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まとめ
不動産の時価評価は、現時点における会計上の資産価値を算出する際に役立ちます。評価方法は原価法・取引事例比較法・収益還元法に分かれており、正しい価値を算出するには膨大なデータや専門知識が必要です。ただし、負荷がかかりやすい業務でもあるため、サービスの活用も有効です。
『TAS-MAP』を導入することで、正確な情報が短時間で入手可能になり、業務が一気に効率化されます。また、評価結果を分かりやすいレポートとして短時間で作成できるため、資料作成に延々と時間を費やす必要もありません。時価評価に係る業務を効率化したいとお考えの場合は、コストと時間の削減につながるTAS-MAPの導入をぜひご検討ください。