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少子化の要因は(2) ー好きなところ住みましょうねー


経済学から見た不動産市場(第51回)

浅田義久
日本大学経済学部教授

 

 前回は少子化についてお話ししました。結婚や恋愛について昔からあまり変化がないってこともお書きしましたね。
 では,少子化が東京圏の不動産市場にどのような影響を与えるかを考えていきましょう。東京圏の合成特殊出生率をみてみましょう。よく,東京圏の出生率が低く,東京圏に人が集中すると,日本全体の出生率が低下といわれます。ところが,下表のように,周辺3県(埼玉県,千葉県,神奈川県)の出生率が高く,有配偶者1人あたりの出生者数をみると,東京都はその他地区より高いことがわかります。ただ,東京都区部未婚率は高いことが分かります。


東京圏の出生率は?

出所)厚生労働省『令和2年度人口動態調査』総務省統計局『令和2年度国勢調査』


 これはどのような意味を持つのでしょうか。未婚率と出生率の関係を転居という点からみていきましょう。下図は東京圏への転入転出,東京圏内での転居をみたものです。


東京圏の移動実態

出所)総務省統計局『令和2年度国勢調査』


 これをみると,東京都区部から都下(都内の区部以外)へ純転出入は-24,877(転出超過)となり,転入のうち36%が単独世帯,転出の21%が単独世帯となっています。周辺3県には45,003人の転出超となっており,転入の34%が単独世帯で,転出の19%が単独世帯となっています。1都3県以外からは252,857人の転入超となり,転入の55%が単独世帯で,転出の11%が単独世帯ということになります。これらから考えると,東京都区部へは若い単独世帯の人々が1都3県以外から多く転入し,結婚などの要因で単独世帯以外になった人々が周辺3県に多く転出していることになります。東京都全体でも同じ傾向で,単独世帯が転入し,単独世帯以外になると周辺3県に転出しています。


 このように,人々はライフサイクルに応じて,世帯特性が変化し,その時々の効用を最大化するように東京圏内外,東京圏内で転出入を行っています。地方から単独世帯として東京圏に転入するときは,広い住宅は不要なため,都区部や都内に居住できますが,結婚や出産などにより広い住宅が必要になると,周辺地域に居住し,東京に就業するようになります。それに応じて,住宅需要が変化するということです。東京圏以外でも同様な傾向がみられます。
要するに人々は自分の効用を最大にする地域を選んで住んで,それを助ける不動産業になることが不動産業の活性化につながるはずです。
私も,そろそろ戸建て住宅から共同住宅に移りたいんですが,mobilityが・・・
 
 さて,不動産業を始め都市経済を分析するために教科書を書きました。社会人の方にもお薦めします。

浅田・山鹿著『入門都市経済学』ミネルヴァ書房

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解説サイトはこちらです。順次充実させたいと思います。

浅田 義久
浅田 義久
日本大学 経済学部 教授 [経歴]上智大学大学院経済学研究科博士前期課程修了 三菱総合研究所、明海大学等を経て、現職 [専門]経済政策、財政・公共経済
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