大阪博覧会は無駄? ーそろそろ合理的にインフラ投資しましょうねー
経済学から見た不動産市場(第52回)
浅田義久
日本大学経済学部教授
インバウンドに関してコラムを書こうと思っていたら,9月末に大阪万博の費用が1.8倍になったと批判する報道が出たので,急遽こちらの方に話題を変えて・・・
以前,東京オリンピックに関するインフラ投資がインフラの老朽化に対する対策としてのイベント戦略であると述べました。
3回前のコラムに日本の高齢化のお話しをしましたが,日本では高齢化が進み,下図のように,政府による社会保障費への支出が多くなり,公共投資は年々減少しています。
出所)国立社会保障・人口問題研究所『社会保障費用統計』
その結果,下図のように全国の資本投資(実質)は2000年頃の半分程度になり,全国資本ストックはほとんど増加していません。
出所)内閣府『社会資本ストック推計』
伸び悩んでいる日本の社会資本ストックを項目別にみたものが下図です。交通に対するストックは増加していますが,住環境や産業関連はむしろ減少しています。本当に国土を強靭化しようとしているのか分からない投資です。防災投資は2005年の頃から再び増加傾向にはありますが,どこかで防災に関しても詳しくお話しすべきですね。
出所)内閣府『社会資本ストック推計』
下図は,東京都,大阪府の1960年以降の実質社会資本投資の東京都と大阪府の構成比の推移をみたものです。1964年の東京オリンピック開催のために2年ほど前から急速に東京都内の構成比が上昇し,その後減少していることがわかります。この時期は,東海道新幹線,東京モノレール,首都高速道路など様々なインフラが整備され,大型ホテルもこの時期に盛んに開業しました。大阪府でも1970年開催の大阪万博前に構成比が上昇しています.オリンピック開催や万博開催というイベントを利用する,いわゆるイベント戦略は国民全体の同意も得やすいのでしょうね。東京都は2015年頃から構成が上昇しています。おそらく,2019年以降は大阪府も増加しているのでしょう。ちょっと気になるのが2008年に大阪維新が府政を担っているんですが,構成比落としていませんか。
出所)内閣府『社会資本ストック推計』
大阪府の社会資本投資がこれだけ低下しているので,経済力の低下は当たり前ではないでしょうか。やや可哀想な気がします。
インフラが前述のように老朽化しており,補修を含めた再投資が必要になっています。ただ,このようなイベント戦略によるインフラの整備補修がよいのでしょうか。そろそろ合理的で効率的なインフラ投資が必要でしょうね。