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サブスクって何?-還暦を過ぎた老経済学研究者にはわからない

経済学から見た不動産市場(第21回)


浅田義久
日本大学経済学部教授


近頃,「サブスク」なるビジネスがはやっているという。

Subscriptionって雑誌の年間購読だと思っていましたが,どうやら違うようです。利用権賃借のつもりで使っている場合もあり,固定料金制度のつもりで使っている場合もあり,何だかよくわからない。


利用権売買なら,リースと何が違うんでしょう。流行っているのはソフトウエアや自動車の期限付き利用です。これはリースにしているだけですよね。

さて,このリースにするのか保有するのかも以前お話しした住宅のテニアチョイスと同じで,資本コストで考えていきます。おさらいをすると,資本コストは資本を保有する費用のことでした。

まず,機会費用として利子費用があります。これは,他の金融資産で保有していたら得られた収入です。次に,償却費用で,資本は年々劣化していき,この価値の減耗分を償却費用となります。これに資本が値上がりならキャピタルゲインとして控除し,値下がりならキャピタルロスとして費用となります。これに保有する際にかかる税金を加えたものが資本コストです。


上記のソフトウエアだと,消費者である個人は技術進歩が早いため減価償却が大きく資本コストが高くなります。対して,生産者である企業が保有するコスト(生産するコスト)は限界費用が0に近いので販売する数が多くなればなるほど平均費用は低くなります。

で,私たちが使っている学術用ソフトウエアなんて日進月歩で変わってくるのでサブスクの方が双方のコストは安くなります。限界費用ってのは追加的1単位の生産に要する費用ですから,従来のソフトウエアのようにCDに書き込んで販売するよりネットを利用してダウンロードさせて期限を切った利用させた方が限界費用が低下するのは当たり前ですよね。


では,自動車は? 自動車は企業にとっては保有にしたって販売にしたって限界費用は変わらないだろうし,消費者にとっても減価償却はそれほど大きくないような気がします。

ただ,ここでは減価償却をもう少し考える必要があるのでしょうね。この場合は,消費者が飽きるという減価償却です。人によっては様々な自動車を乗り換えたい人も居るでしょう。その場合は,サブスクが良いのだと思います。人々の飽きるという減価償却を考えると,保有(保有でも新車,中古車),サブスク,レンタカーと保有期間の違いで資本コストが変わってくるのでしょう。

ただ,消費増税に合わせて自動車は保有に対する課税を下げて,利用の課税を重くしたのでこれらの税を考えて資本コストを計算すべきですね。服やアクセサリーもこのような減価償却の問題でしょう。


で,私が疑問に思っているのは経済学では固定料金制といわれる料金形態をサブスクと呼んでいることです。

特に飲食業界で使われているようですが,これは上記のように保有するものではありませんので,資本コストで考えることはできません。飲食業界で使われているサブスクってのはある期間内は食べ放題って料金形態を指しているようです。これは,同じ料金で購入量は自由なので,固定料金制です。

上記のソフトウエアや自動車は期限を限定して利用権を購入しているのでSubscriptionと名乗るのは良いのでしょうが,飲食業の固定料金制がSubscriptionなのかは還暦を過ぎた経済学研究者にはわかりません。この飲み放題って固定料金制(夢の国のような入場料のみって固定料金制や会員制)や固定料金と可変料金を合わせた2部料金制に該当しますが,これらは消費者余剰が小さくなることがあるので十分に気をつける必要があるんですが,この点もいつかお話しします。


さて,不動産市場でサブスクを考えていきましょう。

当たり前ですが,不動産市場では従前から所有権と利用権を分離する取引は行われています。利用権にも定期借地や定期借家で期限を切ったモノがありますからこれこそSubscriptionですね。居住サービスではホテル,ウイークリーマンション,賃貸住宅,持ち家って多彩です。所有権も非常に多彩になっています。ただ,上記の技術革新や飽きるという減価償却は大きくなっているのかもしれません。

まあ,サブスクっていえば消費者の支払い意思額が増えるなら賃貸住宅といわずにサブスク住宅ってCMを打ってみては。


サブスクに関してもいつもと同じように家庭の問題で考えてみたかったんですが,これは際どくなるのでやめておきます。

浅田 義久
浅田 義久

日本大学 経済学部 教授 [経歴]上智大学大学院経済学研究科博士課程修了 三菱総合研究所、明海大学等を経て、現職 [専門]経済政策、財政・公共経済

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