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地方分権って?-予算もつけずに要求だけ増やす?

経済学から見た不動産市場(第27回)


浅田義久
日本大学経済学部教授


前回,お話しした国債の件にはノーベル経済学賞候補補とも言われているプリンストン大学清滝教授がマクロ経済学の観点から日経新聞に時記事を掲載されているので(2020年9月17日,日本経済新聞経済教室)参考にしてください。
また,前々回のコラムの統計学に関しても2020年9月21日,22日の日本経済新聞経済教室に掲載されています。何と先進的なコラムなんでしょうと自画自賛してしまいます。


今回のコラムは前回の続きとなりますが,自治体の権限の問題です。

今回のコロナ感染症者数や対策の公表で,知事と市長が対立する場面があったことを記憶している人も多いと思います。
県庁所在地の全部ではありませんが,大都市制度によって指定都市(一般的に政令指定都市と言われている)と中核市は「保健衛生」「福祉」が都道府県から移譲されます。そのため,今回のコロナ対策も都道府県直轄ではなく,市が担当することになります。また,あたりまえですが,保健所の運営も市が担当します。

指定都市は人口50万人以上の市から政令で指定されますが,2020年10月1日現在,人口50万人以上の市は28市ありますが,指定都市は20市です。同様に,中核市は人口20万人以上の市が対象ですが,現状で20万人以上50万人以上の市が81市で,中核市は58市なので候補の全部が指定都市や中核市になっているわけではありません。
そして,指定都市や中核市が人口増加している市というものでもありません。指定市のなかでも静岡市と北九州市はこの10年間で人口が減少していますし,新潟市,京都市,堺市も全国平均程度の伸びです。中核市に至っては21市が人口減少しています。この点は,コロナ感染が落ち着いてからお話しします。


この指定都市や中核市のメリット,デメリットがありますが,ここでは公共サービスの最適範囲を考えます。保健衛生,福祉が指定都市や中核市に権限移譲されているのは,この二つの分野ではより住民に近い行政が行った方が良いという理由からです。

しかし,今回のように大きな対応が求められるときには権限移譲が良かったかはわかりません。特措法で,何らかの対策を決めるべきだったでしょう。千葉県市川市が自前の保健所がなくて対策に問題があったとして中核市の申請を検討するとしていますが,今回の件だけで決定して良いのでしょうか。

大阪都構想で,検討課題になっていますが,行政サービスの効率化は今後の大きな問題になると思います。

ゴミ焼却は典型的な例で,日本はゴミの焼却まで市町村に任せていますので,ゴミ焼却施設は1800以上ありますが,ドイツは50程度です。規模の経済も発揮されないので焼却による発電量は非常に少なくなっています。ゴミ収集業務は市町村の方が良いのでしょうか,焼却業務はより広い区域でやった方が効率的です。
同じことは介護保険サービスでも言えます。市町村で料率を変える必要があるのでしょうか。その算定作業は非効率でしょう。


さて,もう一つは以前から問題にしているように,消費税率引き上げによる税収増は社会保障費に使うということですが,保健衛生,福祉(防災も)は増えていません。当然,物件費や人件費も増加していません。
保健所でまだFAXを使っていることや自治体のICT環境が遅れていることが喧伝されましたが,予算がなければ整備できませんので,自治体の責任ではないでしょう。

以前にもお話ししたように,年金や健康保険はリスクの分散の問題であり税金で補填する理由がわかりません。もし,低所得者に対する所得移転ならそれに徹するべきでしょう。そして,税金は公共財,サービス(純公共財ではありません)の最適供給に投入する必要があるでしょう。


このコラムを読んでいる方は少なくとも,コロナ対策事業に一生懸命取り組んでいる公務員の方々に対して対応が遅いといってクレームは着けないと思います。

テレビで有名なコメンテーターがCOCOAなんて意味が無いから入っていないという趣旨の発言をなさっていましたが,あれはネットワーク効果があるので皆が入らないと効果はでません。

皆さんは外部性を考えて行動してくださいね。

浅田 義久
浅田 義久

日本大学 経済学部 教授 [経歴]上智大学大学院経済学研究科博士課程修了 三菱総合研究所、明海大学等を経て、現職 [専門]経済政策、財政・公共経済

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