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Go Toキャンペーンは大丈夫?–早い者勝ちの制度ですか??

経済学からみた不動産市場(第28回)

浅田義久
日本大学経済学部教授


Go To Travel,Go To EATに続いて,GO To 商店街(なぜShopping streetといわないかは置いておいて。なぜかカタカナ好きな東京都が”もっとTOKYO”になったのも不思議です)など様々な支援策が採られているようです。私は大学の講義が遠隔で行われて,これが予想以上に大変でどれも使えない状態です。

この支援策にも様々な批判が出ていますね。
まず,直接補助と比較してみましょう。本来は各自の消費性向に任せた直接補助の方が間接補助より資源配分上は効率的です。住宅市場でいうと低所得者の居住環境が悪いから家賃補助や公共住宅供給(これらが間接補助です)を行うより,所得補助(これが直接補助)を行った方が良いということです。

さて,今回のコロナ対策としては国民全員に10万円を支給する定額給付金,不況業種に対して行った持続化給付金がありました。
定額給付金は全国民を対象としてものの,家計調査によると4~8月の貯蓄率が過去最高になったようです。余裕がある世帯や将来に不安がある世帯で消費を行わず,貯蓄の増したため,世帯平均では貯蓄を増やしたということになります。対して,持続化給付金は申請が簡単だったことで,不正受給が問題になっています。
この二つの施策は消費を増加させる効果があったかは今後のためにも検討すべきです。これらに対してGo To キャンペーンは一部の業者しか恩恵は受けないという批判もありますが,コロナ禍によって業績を悪化した業種には確実に効果はあるはずです。


しかし,経済学に見て問題なのは給付率と,その配分制度です。


まず,給付率の問題を取り上げましょう。
​​​​​​​これは経済学では補助率にあたりますが,これが大きすぎて,おそらく需要予測は無理だと思います。一般的に,需要関数を推定する際は均衡値(実際の価格と取引量)を用いて推定します。ところが,今回のGo To Travelでは実質マイナスの価格が付いた旅行や食事もあるようですね。この需要予測は多分不可能です。だいたい,ミクロ経済学の初歩で習うように,価格弾力性が1より大きいと,値下げをして,大きいと値上げをすると収入は増えます。
で,一体マイナスの価格ではどうなっているか?見当も付きません。余談ですが,消費者物価は税金を購入者価格の一部として取り扱い,補助金はマイナスの税として扱われますので,どのように計算し,公表するかも見ていく必要があります。

また,おそらく旅行やGo To EATを用いて行くお店は贅沢品なので価格弾力性が高く,現在は遊休資産を抱えているため,供給曲線も価格弾力性が高くなるため,補助金を誰が享受するかも分かりません。これも事後的には明らかにした方が良いと思います。
ただし,いわゆる経済波及がコロナによって影響を受けた業種に多く行き渡りますので,一括の直接補助より良いと思います。


さて,もう一つ問題なのは配分方法です。
現在,採られている制度は共有資源(例えば,水産資源)の配分方法を決める際に使われるオリンピック方式というものです。ただし,業者や地域によって最初に配分枠を決めているのでより厄介なのですが。しかも,Go To Travelでは枠を使い切った業者に再び枠を与えたという報道もあります。
私はマーケットデザインに関しては素人なので分かりませんが,マーケットデザインの専門家に意見は聞いたのでしょうか。


まあ,私は極度のRisk AverterなのでGo toキャンペーンの恩恵はそれほど受けないと思いますが,前回お話ししたように,これらの補助は税金か国債(最終的には税金ですが)で賄われるので,迅速性は必要ですが,負担の話も報道した方が良いと思いますが・・

浅田 義久
浅田 義久

日本大学 経済学部 教授 [経歴]上智大学大学院経済学研究科博士課程修了 三菱総合研究所、明海大学等を経て、現職 [専門]経済政策、財政・公共経済

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