テレワークは一時的?–遠隔授業はつらい

経済学からみた不動産市場(第29回)

浅田義久
日本大学経済学部教授


私も大学の教員なので,遠隔授業を行っています。かなり大変で,週にゼミ以外で4科目の講義をしていますので,事前にレジュメを配布し,当日はPPTで双方向授業を行い,毎回試験をして,解答を送ってもらい,それを採点するということを続けていますが,ほぼ毎日がPPT作りと,採点で終わってしまいます。オンデマンドという,動画を撮って配信するだけの教員もいるようですが・・・。本当に辛い1年です。あと3年で定年なのに新規のノウハウを取得しても割に合わないですよね。


さて,今回はやや不動産業にも関係するテレワークの問題です。

テレワークについても新規に数々の調査結果が出されていますが,本当に,テレワークが普及し,都心のオフィス需要は低下するのでしょうか。

まず,テレワークについては,国交省が毎年「テレワーク人口実態調査」を実施しており,地域別・業種別にテレワーク人口の推計結果を出しています。令和元年調査では14.8となっていますが,第1回調査の平成14年の5.7%(雇用型在宅テレワーク,以下は雇用型)からあまり上昇していないことがわかります。

さて,業種別にもテレワーク比率が出ており,情報通信業では35.8%,学術研究,専門・技術サービス業が32.7%と高いものの,他の業種ではそれほど高くなく,不動産業は14.2%です。労働政策研究・研究機構で緊急事態宣言中の在宅勤務実施状況をみる不動産業(45.2%)や金融・保険業(58.7%)などが在宅勤務を実施する割合が高くなっていますが,緊急事態宣言後は戻っているようです。


さて,では東京のオフィス需要が今後どうなるかと言うことですが,都心を就業地としている人たちの特性を見る必要があります。

皆さんのような不動産業の方はご存じだと思いますが,東京都心4区(千代田区,港区,中央区,新宿区)においては業種では金融・保険業,職種では専門的・技術的職業従事者の特化が進んでおり,都心4区就業のこれらの人々の所得は高いのに,他の19区の就業者より遠方に居住していることが分かります。ようするに,既にフレックスタイムかテレワークが進んでいるようです。でも,就業地としては都心4区が重要なんですね。


さて,このテレワーク普及の海外との比較はかなり難しくなります。定義が違うからです。3回前のコラムで統計をちゃんとしようとお話ししましたが,第3波の感染者数も第2波とサンプルが異なっているので,ちゃんと定義しようとお話ししたように,ここでも分析の難しさが出ています。

ただし,ヨーロッパでは同じ定義で調査を行っています。その調査のテレワーク比率と2003年から2015年の1人あたりGDP伸び率をみると,下図のように明らかに右上がりになっています。日本は上記の数値を用いていますが,やや不安ですね。


今回のデータを調べているともっと不安なことが分かりました。

下の図は横軸に15歳の学生のPC保有率を,縦軸に経済成長率を採ったものです。PC保有率はOECDのPISA調査です。恐ろしいことに,これも右上がりですが,日本のPC保有率は飛び抜けています。


そして,その9年前の保有率調査と比較したのが下表です。何と,日本だけ下がっているんです。


この10年ぐらいで高校生のPC保有率が落ちていたんですね。デジタル庁で,行政のIT化を言ってますが,もっと若い人たちのIT技術を何とかしないと日本はどうなるんでしょうね。

大学での遠隔授業でも学生達のIT技術の低さに戸惑っています。62歳のお爺さんが。

浅田 義久
浅田 義久
日本大学 経済学部 教授 [経歴]上智大学大学院経済学研究科博士前期課程修了 三菱総合研究所、明海大学等を経て、現職 [専門]経済政策、財政・公共経済
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