都市制度−指定されれば都市規模が大きくなるとは限らない

経済学からみた不動産市場(第30回)

浅田義久
日本大学経済学部教授


 以前に,お話ししたと思いますが人口集積はなかなか政策によって変えられるものではありませんし,COVID-19感染症蔓延によって変わってくるかも疑問です。

 今回のCOVID-19感染症対策で,保健衛生行政の権限移譲に関しても様々な問題点が浮き彫りになっています。これも以前に書いたように,指定都市や中核市には保健衛生行政が権限移譲され,中核市の申請を検討している市もあるようですが,政令市や中核市に指定されれば都市が成長するというのには大きな疑問があります。今回は都市規模について簡単にお話しします。


 まず,都市規模を検討する際には,行政区域では行わず,都市雇用圏(Urban Employment Area)で検討します。私たちはまず,どこで働くかを考えるからです。

 そこで,中心都市の人口集中地区(DID)が5万人以上の大都市雇用圏(Metropolitan Employment Area, MEA)で分析します。これは一定以上の人口があることなどが条件で,その都市へ常住人口の10%以上が通勤している地区を郊外市町村としてその雇用圏に含めます。すると,横浜市,川崎市,厚木市,さいたま市,千葉市などは東京都市圏に含まれてしまいます。

 表は都市雇用圏人口の推移をみたものです。東京都市圏は1980年から2015年にかけて31.6%増加していますが,大阪都市圏以外の10位以内の都市圏も東京都市圏と同様の伸び率を示しています。また,浜松都市圏や熊本都市圏,新潟都市圏,那覇都市圏,高松都市圏など地方の都市圏も高い伸び率を示しています。

都市雇用圏人口の推移

表注)2010年と2015年に順位変動はない。2000年以前の( )内は順位.なお,前橋都市圏や宇都宮都市圏,岡山都市圏などは都市圏の範囲が大幅に変わっているので比較は難しい。


 さて,都市圏を用いて都市規模を検討した結果,ランクサイズルールが分かってきました。図は,縦軸に2015年の日本の都市圏上位143の人口の対数,横軸はその都市圏の順位の対数をプロットしたものです。

 都市のランクサイズルールとは,ある地域内の都市で,地域内で人口第2位の都市の人口が人口第1位の都市の人口の1/2,第3位の都市の人口は第1位の都市の1/3,n位の都市の人口は第1位の都市の1/nにとなるという法則で,人口と順位の対数をとると線形になります。

 図をみると,ある程度直線に近くなっており,ランクサイズルールに従っているとともに東京都市圏がやや大きく,京都都市圏がやや小さいことがわかります。

 このランクサイズルールは都市規模では世界的にかなりの国で実証されていますし,時代を遡っても適応されることがわかっています。人口移動に制約をつけた中国でもランクサイズルールが成立します。都市経済学では都市規模や港湾,空港などは階層構造にあるシステムで発生することが理論的にも説明されています。自治体に何らかの指定があったとして,このルールから逃れることはできないのです。

 

 このランクサイズルールは,規模や星(空の星です)の輝度や,皿を割ったときの破片の大きさまで適応されるそうです。ググってみると色々出てきます。まあ,皿はかなり沢山割る必要があるのですが,誰がやったのかよく分かりません。


浅田 義久
浅田 義久
日本大学 経済学部 教授 [経歴]上智大学大学院経済学研究科博士前期課程修了 三菱総合研究所、明海大学等を経て、現職 [専門]経済政策、財政・公共経済
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