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知識とコロナウイルスの伝搬 ー集積が大きく影響します

経済学からみた不動産市場(第32回)

浅田義久
日本大学経済学部教授


 

 前回のコラムはやや力を入れすぎて,データ収集にもかなりな時間をかけてしまいましたので,今回はやや楽に,宣伝を込めてお送りします。

 今般,(株)タスとの共同研究で「空室率推計装置及び方法並びにコンピュータープログラム」に特許がおりました。詳細はこのサイトに載っていると思いますので,そちらをご覧ください*。経済学部では珍しいらしく,少なくとも弊大学では初めてのようです。しかし,平成30年5月に出願して,令和3年3月に登録されるってちょっと時間係りすぎでは・・


 さて,特許をはじめとした知識の集積に関して空間経済の研究者達が多く研究を既に行っています。空間経済学の泰斗藤田昌久京都大学名誉教授は20年以上前から知の集積とイノベーションに注目し,分析を行ってきました。特に,イタリアのルネッサンス時代にも言及し,グローバル化と知のルネッサンスの同時進行が起こってきたことを明らかにしています。

 近年はこれらを実証研究も盛んに行われ,一橋大学の中島賢太郎准教授などは戦前から直近までの特許明細書のデータを用いて発明者の集積がイノベーションに重要な影響を与えることを明らかにしています。残念ながら2016年ぐらいまでのデータなので私と(株)タスの距離は用いられていないようですが,・・・・


 さて,以下は非常に真面目な話になります。この集積はコロナウィルスの感染にも大きな影響を与えます。人口あたりの累計感染者率(感染者数を人口で除した)をみると,2021年5月4日現在で,東京都が1.03%と最も多く,島根県が0.05%と最も少なく,これをもって評価する報道もあります。

 ところが,皆さんもご存じのように,感染確率は密度の二乗に比例すると言われています。厳密には二乗ではありませんが,混雑によって接触確率も下がりますが,ある地域に100人の場合は10人の地域より10倍の人が居ますが,接触は100×100人で10,000回に対して,10×10人で100回なので100回となります。一回目の緊急事態宣言の時に接触を80%減少させるため外出を80%減少させようという報道がありましたが,これは間違いで,外出を80%減少させると接触は96%減少しまいます。接触を80%低下させるためには外出は55%程度の減少で達成されます。


 さて,非常に単純に各都道府県のDID (Densely Inhabited District;人口集中地区)面積とDIDの人口密度を説明変数として感染者数を推定して残差をみると,東京都は23位なので中程度になります。最も残差が大きい(DIDの人口密度を考慮しても感染率が多い)のは沖縄県で,最も小さいのは新潟県になります。島根県は40位なので少ないようですが,山梨モデルと言われている山梨県は19位なので東京都とそれほど差異はありません。台湾や豪州,ニュージーランドが感染者数が少ない国とされていますが,人口密度も考慮するとどうなのでしょうか。これらの国のDID面積が分からないので検証できていません。

 上記が集積の経済と集積の不経済です。最適な都市集積を考えるのは非常に難しい問題です。


* 「空室率推計装置及び方法並びにコンピュータープログラム」に関する特許については、近日中に詳細を掲載予定です。

浅田 義久
浅田 義久

日本大学 経済学部 教授 [経歴]上智大学大学院経済学研究科博士前期課程修了 三菱総合研究所、明海大学等を経て、現職 [専門]経済政策、財政・公共経済

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