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コロナ第5波収束 −理由が分からないってホント?

経済学からみた不動産市場(第36回)

浅田義久
日本大学経済学部教授

 

 10月11日の東京都内での新規感染者数が49人となってようやく第5波が収束したと言われていますが、以前お書きしましたが、当初、専門家委員会では実効再生産数を見ていくことが重要だと仰っていました。なぜ、新規感染者数のレベルに拘っているかよく分かりません。実効再生産数は経済学的には一週間平均の対前週比に近似できます。これをみると、いわゆる第5波のピークは8月1日の2.14で、その後対前週比は徐々に低下し、8月25日に1を切っています。一週間平均の最大感染者数は8月19日の4,774人です。第4波のピークは4月22日の1.29で、5月6日には1を切っています。この時の一週間平均の最大感染者数は5月13日の934人です(GWの人出のせいで6日ほどやや増加がありましたので)。第5波の方がピークが高かったのはウイルスの変異のせいかもしれませんが、この点はデータがありません。

 さて、どうやら、図から分かるように、政府はレベルをみて緊急事態宣言やまんえん防止措置をとっているようです。下図から分かるように、1月10日に緊急事態宣言を発令していますが、既に対前週比は1を超えています。そして東京も大阪も解除されたときには既に上昇傾向にあります。これらの対策で人出が変わるかどうかは分かりませんが(どこかでコラムに書きます)、対策は適時行う方が良いのではないでしょうか。



 今回の第5波で、人出が少なくなっていないのに新規感染者数が激減した理由が分からないという意見もあるようです。これもデータから分かります。下図をみてください。赤実線が東京都の感染者数対前週比です。次に、青破線が東京主要駅の20時台の人出を対数にしたものです。非常に相関が高く、人出は翌日には分かりますので、おおよそ12日後の新規感染者数前週比が分かると言うことです。

そして、いわゆる第5波ですが、確かに人出は増えています。ところが、ワクチン接種によって感染率が9割程度抑制されると言われていますよね。緑2点破線は人出のうちワクチン接種者は0.1(接種しても10%は人出とみなす)としてカウントしたワクチン接種率修正人出です。もうお分かりだと思いますが、緑2点破線のワクチン接種率修正人出(これも12日前)が感染者数対前週比に影響しているのです。



 さて、どうして、このようにワクチン接種率修正人出と新規感染者数の関係を公表しないかと考えたところ、以前のコラムでお話ししたように、安心して人出が最適水準より多くなってくる可能性があるからなのではと思います。人出が戻ったとは言え、10月8日でも2年前の56%に過ぎません。今、通常の生活に戻すと言って2年前の人出に戻すとワクチン接種率が80%を超えていても新規感染者数は増加に転じます。また、もう一つ重要な事は現在の対前週比はワクチン接種率が60%を超えていることと、マスク着用率が現状のままという条件もあります。おそらく、マスク着用率が減少すると人出に対する新規感染者数前週比の弾力性(追ってどこかで説明しますね)は上がってしまいます。

 もう一つ気になるのは、報道で第5波と言うときはどうも東京の変動をみているのだと思いますが、他の地域は同じではありません。全国も同じだという意見もみられますが、感染者の20%以上が東京なので全国で感染者数の変動をみたら当然東京と同じにみえます。大数の法則から、東京の分析はある程度可能ですが、人口の少ない地域は変動が激しくなります。もう少し、地方圏も丁寧にみた方良いように思います。10月12日現在で対前週比が1を超え始めた地方もあります。

浅田 義久
浅田 義久
日本大学 経済学部 教授 [経歴]上智大学大学院経済学研究科博士前期課程修了 三菱総合研究所、明海大学等を経て、現職 [専門]経済政策、財政・公共経済
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