20万円の貸家の面積推移を見てみよう! < 23区 vs 都下 >
■サマリー
- 家賃20万円の物件について、東京23区と東京都下(離島除く)の平均面積(㎡)を比較
- 東京23区は平均面積が緩やかに低下している
- 東京都下は第2回緊急事態宣言以降に平均面積が低下したが、2021年9月以降に上昇し、直近6ヶ月は横ばいに推移
◆はじめに
今回は、家賃を20万円※1に固定して、東京23区と東京都下(離島除く)の平均面積(㎡)の推移を見ていきます。
コロナ禍を経てテレワークが常態化したことで、「都心の狭い部屋」よりも「郊外の広い部屋」へと需要が変化していますが、供給側はどのように変化しているのでしょうか?
実際の賃貸募集データを用いて分析していきたいと思います。
※1:管理費・共益費込みの家賃が18万円~22万円の物件を20万円の物件としています。
●東京23区と東京都下の平均面積推移
図1では、東京23区と東京都下の平均面積の推移(2018年1月~2022年9月)を示しています。
赤い実線は東京23区、緑の破線は東京都下を示しており、緊急事態宣言が施行された期間は薄い青色で塗りつぶしています。
また、それぞれの地域について、四分位範囲※2を面で塗りつぶしています。
※2:データの散らばりを表す。データの中央50%部分の範囲(25%~75%の間のレンジ)。
図1 平均専有面積の推移 23区vs都下
この結果をそれぞれの視点で見ていきましょう。
23区のグラフを見ると、2021年5月で低下から横ばいに切り替わっています。このことから、「それまでは同じ家賃でより狭い部屋を募集できていたのが、2021年5月で下げ止まった」という可能性が推察できます。
一方で都下のグラフでは、コロナ禍で23区と同様の傾向が見られましたが、宣言明けには元の水準に回帰しています。
今回の分析では、家賃20万円のすべての賃貸物件を対象としました。
しかし、募集供給ではなく新築供給に着眼した方が、より詳細な影響を把握できるかもしれません。また、世帯構成別に分析した方が世帯ごとの“住む場所選び”の実態をつかめるかもしれません。
これらの課題は次回以降のコラムでご紹介していこうと思います。
●四分位範囲の深堀り
さて、ここからは四分位範囲を使ってデータの散らばり具合の推移について、少し深堀りしてみていきたいと思います。
図1に描画されている四分位範囲に目を向けてみると、そのレンジの傾向に23区と都下で差があることが分かります。
23区では、コロナ以前~2022年9月までレンジが少しずつ狭くなっています。しかしその一方で、都下の四分位範囲はだんだんと広くなっています。
この現象を深堀りするために図2を見てみましょう。
図2 四分位範囲の推移
図2では、数値化した23区と都下の四分位範囲の推移を比較しています。
このグラフから、2019年11月を起点として23区と都下の四分位範囲(つまり、データの散らばり具合)が逆転しており、さらにその後2020年4月頃から乖離していく様子が分かります。
また、図3には四分位範囲だけでなく、最小値と最大値の推移も併せて示されています。
図3 最小値~最大値のレンジ推移
ここでは左側に23区、右側に都下を並べています。
見比べてみると、「四分位範囲が広い都下よりも、23区の方が最小値~最大値のレンジが広い」ということが分かりました。
どうしてでしょうか?
ここで、最新時点(2022年9月)で切り取ったヒストグラムを見てみましょう。(図4)
図4 最新時点(2022年9月)のデータ分布
これまでの結果通り、「最小値~最大値のレンジは23区が広い」ということは図4からも分かります。
ここからさらに図4から読み取れるのは、「ヒストグラムのとがり具合(尖度)の違い」です。
23区は40㎡付近でヒストグラムが鋭くなっている一方、都下では50㎡~75㎡付近全体が同程度尖ったヒストグラムになっています。
つまり、23区では40㎡付近の“狭い区間”にデータの中央50%部分が存在していて、都下ではその50%のデータが23区より広い50㎡~75㎡付近に散らばっているということです。
この分布傾向の差が、図3のような結果を生んでいたということになります。
◆おわりに
今回は四分位範囲を用いてデータの性質を紐解いてみました。
しかし、データをどのように表現するかによって、用いるべき指標は異なります。
不動産マーケット分析「ANALYSTAS」では、それぞれのデータに即した利活用・組み合わせ方法をご提案させていただきます。ご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。