賃貸住宅管理業法とは?~オーナーも油断は禁物~
2021年6月に施行、2022年6月に改正された賃貸住宅管理業法。これは、賃貸住宅の管理業務を適正に実施するための措置を定めた法律で、賃貸住宅管理に関して発生しているトラブルを防止するとともに、健全な賃貸住宅市場の発展を目的としています。
そこで今回は、賃貸住宅管理業法とは何か、施行された上で注意すべき点などについて解説します。
もくじ[非表示]
- 1.賃貸住宅管理業法とは
- 2.サブリース業者の適正化に係る措置
- 3.施行されても注意は必要
- 4.おわりに
賃貸住宅管理業法とは
昨今、単身世帯や外国人居住者の増加に伴い、賃貸住宅志向が高まってきています。
一方で賃貸住宅の管理は、オーナーの高齢化や管理内容の高度化に伴い管理業者に管理を委託する傾向が強まってきました。特に賃貸経営において一番のリスクともいえる空室リスクを回避できる「サブリース方式(図1)」を利用するオーナーが増加しました。
図1サブリースのイメージ
しかし、オーナーとサブリース業者の間で家賃保証などの誤認が原因となるトラブルが多発し社会問題にまで発展しました。
そこでオーナー等の貸主の保護を目的として新たに施行されたのが「賃貸住宅管理業法」です。この法律では以下の2点によって貸主の保護が図られています。
・賃貸受託管理業に係る登録制度の創設
・サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約の適正化に係る措置
今回はサブリース業者と所有者との間の賃貸借契約の適正化に係る措置についてもう少し掘り下げてみましょう。
サブリース業者の適正化に係る措置
先述したように賃貸住宅管理業法ではサブリース業者とのトラブルが社会問題に発展したことを受けて、サブリース業者の適正化を図る措置が設けられました。この措置によってサブリース業者は主に以下の行為規制が設けられています。
(1) 誇大広告等の禁止(第28条)
家賃保証などの契約条件を実際の契約条件よりも良い条件だと誤認してしまうような広告は禁止されました。
例えば「安心の30年家賃保証!収入は一切下がりません」といった家賃がずっと下がらないかのように誤認させてしまう広告は禁止となっています。
(2) 不当な勧誘の禁止(第29条)
サブリース業者が勧誘時に不実のことを告げたり、契約の判断に影響を及ぼす重要な事項についてわざと事実を告げたりしないことについても禁止されました。
将来の家賃減額リスクやサブリース業者から契約解除の可能性などをあえて伝えずにメリットだけを伝えたり、「当社のサブリース方式なら入居率は確実であり、絶対に家賃保証できる。」といったことを伝えたりする勧誘行為は禁止となっています。
(3) 契約締結前における契約内容の説明および書面交付(第30条)
サブリース業者は、特定賃貸借契約の締結前に重要事項の説明をしなければいけないとされました。借地借家法の適用を含めた14項目を記載した書面を交付してサブリース契約を締結する上でのリスク事項を締結前に説明することを義務づけています。これによりオーナーになろうとしている人が契約内容を正しく理解したうえで契約ができます。
以上から賃貸住宅管理業法は、今までのような強引なマンション建築の営業を減らし、健全な賃貸住宅市場を目指していこうという法律になります。
施行されても注意は必要
先ほどは賃貸住宅管理業法が施行されることで不当な営業が減り、適切な賃貸住宅市場に向かっていくと説明しましたが、いくつか注意すべき点もありますので解説していきたいと思います。注意すべき点は以下の2点です。
(1) サブリース業者に賃料減額請求権が行使される
サブリース契約の場合、賃料を2年ごとに見直すケースが一般的ですが、賃貸住宅管理業法によって借地借家法第32条1項がサブリース業者にも適用され、2年の期間内でもサブリース業者が賃料を減額できるようになっています。そのため、オーナーは常に周りの相場はいくらなのかを把握しておき、不当な減額請求に対応できるようにしておく必要性があると考えられます。
(2) 解約時および契約拒絶の際は正当事由が必要
サブリースの解約についてはその業者ごとによって解約内容は様々です。今回の賃貸住宅管理業法において、借地借家法第28条によってオーナーからの解約時には正当事由が求められます。自己使用したい、自主管理に切り替えるなどオーナーからの解約理由は様々ですが、それが「正当事由」として認められるかは非常に不確定です。場合によっては、受け入れられない可能性もありますので注意しましょう。
おわりに
今回は、賃貸住宅管理業法の改正に伴い、賃貸住宅管理業法とは何か、ポイント、注意点について解説しました。賃貸住宅管理に関して、現に発生しているトラブルの防止と、健全な賃貸住宅市場の発展を目的とした法律です。しかし、先ほど述べたように注意すべき点もあります。
すでに賃貸住宅のオーナーの方も、これから賃貸経営を考えられている方もサブリース業者とどんな契約を結んだかにかかわらず、最終的なリスクと責任はオーナー自身で負うことになることに注意しましょう。