ウッドショックと賃貸価格
サマリー
- ウッドショックにより木材価格が上昇している
- 不動産価格も上昇している
- 賃料は据え置き
★ウッドショック
『ウッドショック』という言葉をここ2~3年でよく聞くようになりました。これは端的に、木材価格の上昇によって新築木造住宅の価格が高騰していることを意味します。
ウッドショックの原因は様々ですが、特にコロナウイルスの蔓延は強く影響したと考えられています。
まず、外出制限を契機としてテレワークが浸透し、木材輸出国においてより郊外の新築住宅への需要が増えました。
すると今まで輸出していた分の木材を自国内に回すことになるので、海外への輸出が減ります。
日本のハウスメーカーは建築用木材の7割を輸入に頼っていますので、自国内で木材の供給不足が起きます。その結果、木材の調達コストが増加した分を反映して、新築木造物件の価格が吊り上がるというわけです。
実際に日本銀行の「木材・木製品 国内企業物価指数」の推移を見てみると、2021年3月頃から、木材価格の上昇が顕著に現れています(図1)。
図1 木材・木製品 国内企業物価指数
また、不動産価格についても国土交通省「不動産価格指数」より推移をみることができます(図2)。
図2 不動産価格指数
戸建て住宅は2020年7月頃から上昇していることが分かります。
また、マンションの価格も直近10年間で上昇し続けていますが、こちらは住宅ローン金利の低さが強く影響していると考えられます。
★賃料に影響はあるか?
さて、木材と住宅価格が高騰していることはわかりましたが、賃料はどうなのでしょうか。
実際に募集された賃貸データを用いて、東京23区の共同住宅の賃料動向を見ていきたいと思います。
まず、東京23区の賃料について、構造別の時系列推移を見てみます(図3)。
図3 東京23区 構造別賃料単価推移
グラフを見ると、木造はもとよりすべての構造において、賃料に大きな変動がないことが分かります。
ここで、ウッドショックの影響をより細かく見るために、「竣工から2か月以内に公開されたデータ」を抽出してみましょう。
これにより木材価格の高騰が新築賃貸住宅の賃料に影響しているのかを見ることができます(図4)。
図4 東京23区 構造別賃料単価推移 【竣工から2か月以内に公開されたデータ】
新築住宅に絞っても賃料は横ばいの様相を呈しています。
…ということで、ウッドショックは(今のところ)賃料に影響していません。
★おわりに
今回はウッドショックによる住宅価格上昇に賃料も呼応するのか、実際の募集データを用いて検討しましたが、「賃料は大して変わらない」ということが分かりました。
通常、建築コストが増加すれば賃料もあがります。ただ、現在の日本は物価が上がっても賃金が上がらないため、家賃が上がりにくくなっているのです。
正直、「やはり」という結果になりました。
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