公図からみた東京ディズニーランド
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法務局の地図(公図)データとは
2023年1月23日より、法務局の地図(いわゆる公図)データが無償で公開されることとなり、不動産業界で大きな話題を呼んでいます。(図1参照)公図とは、地番や土地の境界を示す線でつくられた地図です。従来は、地図の取得にあたって一件あたり450円の手数料がかかりPDFファイルで提供されていることから、個別の土地の境界を調査すること以外の目的では使いづらいデータでした。しかし日本全国のデータが、機械処理可能な形式で公開されたために、地域的な傾向を分析するなど一気に利活用の幅が広がったと考えられます。
図1 法務局の地図データ 浦安市立明海小学校付近
座標系の有無と地図の品質
公開された法務局の地図データの品質には、大きく2種類存在することが確認できています。それは「座標系」に関する情報の有無になります。座標系という専門用語が出てきましたが、これは「緯度」や「経度」の情報のことを指しています。経緯度情報の有無は地図の見栄えにはあまり影響しませんが、地図を使って分析する上では大きな障壁となります。経緯度情報が有れば、コンピューター上で他の地図と簡単に重ね合わせることができるため、衛星写真や国勢調査といった他のデータとの組み合わせた分析が可能となるのです。☛組み合わせた分析の事例;再開発の穴場?未消化容積率が多い街を探しあてるには
地籍調査と座標系の関係
利用したい地域のデータの「座標系」の有無は、概ね「地籍調査」が実施済みである地域かどうかが、判断のヒントとなるようです。「地籍調査」とは、一筆ごとの土地の境界や面積を測量する調査で、長い年月をかけて徐々に調査済みエリアが拡大しています。現時点の進捗状況は「地籍調査状況マップ」http://www.chiseki.go.jp/map/index.phpで確認することができます。
例として、千葉県浦安市の公開データのうち、座標系情報が存在したデータのエリアを図2に示します。浦安市は東京湾の埋立地が市域の大半を占めていますが、座標(経緯度)が存在するエリアは沿岸部を中心に、市域の約35.7%にとどまっています。地籍調査状況マップによる2023年1月現在の進捗率は42%であることから、概ね近い値となっていることが分かります。ちなみにディズニーランドのある浦安市舞浜付近は、座標なしのエリアであるため、後の分析では「ジオリファレンス」と呼ばれる手法で地図データに座標を与える加工を施しています。
図2 登記所月地図の電子データ 座標系の有無 千葉県浦安市
東京ディズニーランドの公図を観察する
さて、前置きが長くなりましたが、公開された地図データを実際に見てみたいと思います。
図3~図5に、ディズニーランドの所在地である浦安市舞浜付近の3時点の航空写真(国土地理院)に2022年時点の法務局地図データを重ねたものを示します。
図3 1979年頃 建設前
図4 1984年頃 建設前
図5 2019年頃 近年の姿
航空写真と公図を重ね合わせることは、場所を特定することが容易になるだけでなく、ある土地の地歴情報、すなわちどのような土地利用の変遷があったかを理解する上で役立ちます。
番号が若い地番1-1と2-1にディズニーランド、地番2-2にディズニーシーのパーク内エリアが広がっており、いずれも極めて広大な土地となっています。一方、周辺部に目を向けると、番号の大きな地番が施設ごとに振られており、周辺のホテルや付帯施設の建設が進むにつれて、徐々に土地を分割して地番を割り当てた経緯が偲ばれます。
おわりに
不動産マーケット分析「ANALYSTAS」では、今回ご紹介しました法務局の地図データをはじめ、さまざまなデータの利活用方法をご提案させていただいております。ご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。
注1:ジオリファレンス
座標情報をもたない画像データなどに対して、航空写真等などの位置情報を有するデータを参照して座標情報を与える手法のこと。