東京・地価の山 ―魚・鳥・心の目で地価を見る―
もくじ[非表示]
- 1.魚の目で地価を見る
- 2.鳥の目で地価を見る
- 3.心の目で地価を見る―地価を山に見立てると―
- 4.おわりに
魚の目で地価を見る
ある地点の地価を調べる際に、その近隣に「地価公示」・「地価調査」ポイントがあれば、その価格とおおよそ近い額になろうと推測することができます。地価公示・地価調査のポイントが周辺に無い場合や、商業系と住宅系など異なる用途である場合は、TAS-MAPのような評価サービスを使うことで、価格を査定することができます。このような地価の調べ方は、目の前の一点一点を、「魚の目」のような狭い視野でみていると言えるでしょう。
図1に、2022年1月時点の地価公示・地価調査注1のポイントを、地価に応じて青色~黄色で色分けしたものを示します。ブロッコリーのようにも見えます。ブロッコリーの黄色い蕾のように見えるのは、特に地価が高い場所です。都心部ほどポイントの数が多いため、点描画のように地価のエリアごとの傾向が浮かび上がってきます。しかし、郊外になるほど密度が下がり、「魚の目」のような見方にならざるを得ません。
図1 東京23区の地価公示・地価調査(2022年1月時点)
鳥の目で地価を見る
続いて、図2「東京23区 地価推計図」をご覧下さい。 この図は、図1の各ポイントのデータから統計モデルを用いて作成しています。図1に比べて、23区のどのようなエリアの地価が高いのか低いのか、直観的に分かりやすくなったのではないでしょうか。
色の濃淡によって、同価格帯のエリアの範囲、沿線別の価格差、などを知ることができます。これは、広域で俯瞰する「鳥の目」で地価を調べる方法と言えるでしょう。
図2 東京23区 地価推計図(2022年1月時点)
心の目で地価を見る―地価を山に見立てると―
「鳥の目」で地価をみることで、地域を俯瞰して地価の傾向をつかむことができました。しかし、われわれの想像力を使えば、「鳥の目」よりももっと直観的に捉えることも可能かもしれません。「心の目」を使って山の無い東京に、地価を山に見立てると果たしてどうなるか、図3をご覧ください。
図3 東京23区 地価の山
東京23区という絶海の孤島の中央に、山が複数そびえております。この山々の高さが、すなわち地価を表しています。この島には、東京駅周辺の大丸有地区を筆頭に、新宿、渋谷の3つの大きな嶺があります。
これらの山々の尾根を伝うように山手線という登山鉄道が島の中央部を周回しています。山手線の内部に目を向ければ、南側の約3分の2が山地を占めており、北側は一部低地となっております。南部は、港区エリアをはじめとする高原地帯となっており、一帯が高価格帯エリアであることが分かります。一方、早稲田周辺は盆地となっており、高い山々に囲まれた局所的な低価格帯エリアであること分かります。
図4 東京23区 山手線 地価の断面図
図4に、山手線のルート上の地形の断面図を示します。これを山の稜線として捉えると、山と谷、尖った山となだらかな山が見てとれます。
これは、すなわち沿線の地価の高低や、地価が高い部分が局所的であるか、広がりがあるのかを表しています。実際の渋谷駅付近の地形は、地名のとおり「谷」ではありますが、この島では3番目に高い「地価の山」を形成しています。
おわりに
今回は、「魚」・「鳥」・「心」それぞれの視点から地価を見ることを試みました。地価公示・地価調査といった比較的単純なデータあっても、多彩なデータビジュアライゼーションによって多くの示唆を得ることができます。
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注1:2021年7月地価調査と2022年7月地価調査を線形補間することで、2022年1月時点の価格とした。