駅近でも住環境の良い街はどこ？　宇宙ビジネスとタス

宇宙ビジネスとタス

　昨今、宇宙開発に参入する民間企業の存在は、特段珍しいものではなくなりつつあります。こうした民間主体の宇宙ビジネスは、ロケットや人工衛星の製造・打ち上げに関わるインフラ領域と、衛星画像や位置情報といった人工衛星からデータの取得や活用に関する領域など、いくつかの分野に大別されます。

　タスが中でも注目しているのは後者の「衛星画像」です。タスの得意とする不動産領域においては、衛星画像のような広範囲に空（宇宙？）から得られる情報は、急速に変化する都市環境をモニタリングする上で、有用なデータと言えるでしょう。

オルタナティブデータとは？

ところで、「オルタナティブデータ」という言葉を耳にしたことがありますか？

一般社団法人オルタナティブデータ推進協議会では、下記のように説明しています。

　衛星画像は、こうしたオルタナティブデータの代表例ともいえるデータです。近い将来、こうしたデータがビジネスの現場の意思決定において広く活用されることが想定されます。今回は、タスならではの「不動産」に関する知見を活かして「衛星画像」のデータ活用を考えてみましょう。

衛星画像から緑の多い街を探してみよう！

　衛星画像は、以前は軍事機密とされ入手が難しいデータでしたが、現在では比較的高解像度のデータが安価・もしくは無償で入手できるようになりました。ヨーロッパの地球観測光学衛星「Sentinel-2」から2023年3月8日観測されたデータから作成した衛星画像を図1に示します。

図1　東京23区　衛星画像

　人工衛星が観測している波長は、私たちの目が受容できる「赤」「青」「緑」の光の3原色からなる可視光線だけではありません。「近赤外線」はその一つであり、赤の波長と近赤外線の波長を計算することで「ＮＤＶＩ」という植物の量や活性を表す指標を作成することができます。

図2　東京23区　NDVI

　図2は、東京23区のＮＤＶＩを表しており、緑色が濃い部分ほど、植物の量が多いことを示しています。渋谷区にまとまった濃い色の部分がありますが、これは代々木公園や明治神宮の緑地を表しています。

駅近でもみどりの多い街ランキング・トップ30

　ところで、快適な住環境を志向する人々にとって、みどりの多さは一つの評価ポイントとなります。特に建物の密集する都心部において公園・緑地は「都会のオアシス」などと呼ばれ、みどりに面した物件はそうでない周辺の物件よりも高く評価されることもあります。もちろん郊外ではみどりをふんだんに享受できますが、都心の利便性を犠牲にすることになり、悩ましい問題です。

　以前のコラム「到達圏分析から分かる！便利な地域・不便な地域」では、各駅から徒歩10分以内に到達できる範囲を「駅近」エリアとして分析しました。今回もこれに倣って、東京23区内で駅から10分圏内の「駅近エリア」にみどりが多い駅ランキングを作成しました（図3）。駅近の「利便性」も「みどり豊かな住環境」も重視したい人とっては、理想の街が見つかるかもしれません。

図3　駅近エリアに「みどりが多い駅」ランキング

　23区内の名所・公園に隣接する駅や、お台場周辺が多くランクインしています。高級住宅街として名高いエリアは、公園の緑地だけでなく、邸宅内の庭木や街路樹も、街全体のみどりの多さに貢献しています。25位の高井戸駅は、広い「栗畑」があることが特筆されます。23区内に栗畑があるなんて、私自身とても驚きました。

　一部の駅ではみどりは多いものの、幹線道路や高速道路に近い駅も含まれています。住環境はみどりのような「加点要素」だけでなく、騒音・振動などの「減点要素」も含めて検討する必要があります。

おわりに

　今回は、宇宙ビジネスとタスと題して、オルタナティブデータの一種である衛星画像を用いた分析事例についてご紹介しました。不動産マーケット分析「ANALYSTAS」では、今回ご紹介したような衛星画像やオルタナティブデータを含む、不動産にまつわる様々なデータ・分析サービスを展開しております。ご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。