東京23区の暮らしやすさ ~気温・降水量から~
はじめに
暑い、寒い、雨がよく降る、めったに降らない。そんな気候は、私たちの暮らしの満足度に大きな影響を与える要因のひとつです。
今回は、気象庁が2022年に公開した気象要素の平年値メッシュデータ※1から気温と降水量に注目して、東京23区での暮らしやすさについて考えていきたいと思います。
日本には四季があり、季節によって気候が大きく変化します。その中でも変化の幅が大きい夏と冬の代表値として、7月と1月の気温・降水量の平年値をそれぞれ見ていきましょう。
気温
まずは7月の最高気温と、1月の最低気温です。
図1-1、1-2は、1kmメッシュ(3次メッシュ)ごとに最高気温・最低気温の平年値(2020年推計)で色分けしたものです。
図 1-1 7月最高気温平年値
図 1-2 1月最低気温平年値
7月最高気温を見てみると、東京湾に近いほど最高気温は低く、反対に離れるほど最高気温が高くなる傾向がわかります。
1月最低気温を見てみると、今度は東京湾に近いほど最低気温が高く、離れるほど最低気温が低くなる傾向がわかります。
併せて、東京湾に近いほど寒暖差が小さく、離れるほどに大きくなっていく傾向が見て取れます。一般に、沿岸部では海水の影響により寒暖差が小さくなると言われており、東京都23区もその傾向と合致しています。
気温の観点では、東京湾に近接する大田区・品川区・港区・中央区・江東区・江戸川区が比較的過ごしやすい気候と言えるでしょう。
降水量
次に、月間降水量について見ていきましょう。
図2-1、2-2は、1kmメッシュごとに月間降水量を色分けしたものです。
図 2-1 7月降水量平年値
図 2-2 1月降水量平年値
気象庁によると、1時間に10mmから20mmの降水量があると地面に水たまりができる※2ようです。簡単に時間換算すると、月間の降水量が約15mm少ない場合、1ヶ月あたりの降雨時間が1時間少ないことになります。降水量の地域差が大きい7月でも、降水量の差は最大30mm程度です。したがって、月あたりの降雨時間の差は最大で2時間程度にしかなりません。
図2-3は、年間の降水量合計平年値を1kmメッシュで色分けしたものです。
図2-3 年間降水量平年値
年間で見ても降水量の差は最大で300mm程度です。差が大きい世田谷区―江戸川区間の引越しをしても、体感上は違いを感じられないかもしれません。
降水量の観点では、東京都23区内は大きく条件は変わらないと言えるでしょう。
賃料×気温
最後にタスで推計している23区ごとの1㎡あたりの賃料単価と、気温とを重ね合わせてみていきましょう。
図3-1 ㎡賃料単価(2024年4月末)
図3-1は、2024年4月末時点のデータから推計した単身向け物件と家族向け物件の1㎡あたりの賃料単価です。ここで、ワンルーム・1K・1DKの間取りを単身向け、それより大きな間取りを家族向けとしています。
ここに1月の最低気温と7月の最高気温を重ねたものが図3-2、3-3です。
図 3-2 ㎡賃料単価×7月最高気温
図 3-2 ㎡賃料単価×1月最低気温
1月では最低気温が高く、7月では最高気温が低い。その上で単身向け・家族向けで賃料が低めの地域は、画像から江戸川区の南側であることがわかります。詳しくみると、図3-4に示すように東京メトロ東西線の西葛西駅・葛西駅とJR京葉線の葛西臨海公園駅との間にあるエリアです。
図3-4 江戸川区葛西地区
おわりに
今回は気候の中から気温と降水量に注目して東京23区の暮らしやすさについて考えてみました。
その結果、降水量については23区内では大きな差異が確認されず、気温については東京湾沿岸の地域で夏冬の寒暖差が小さいことがわかりました。
さらに、タスが推計した賃料単価と併せて考えることで、今回の分析では江戸川区の葛西臨海公園近辺が暮らしやすいのではないかと結論付けることができました。
今回注目した気温や降水量のほかにも、日照時間や雪の降る地域では降雪量などを考えてみても面白いかもしれませんね。
※1 降水量、気温、最深積雪、日照時間、全天日射量の5種類の気象要素について、
過去30年間の観測値から1km(3次メッシュ)ごとの平年値を推定・算出したもの。
2020年推計分は1991~2020年の観測データを使用
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